草間彌生さんはヤヨイ・クサマとしての方がしっくりする。ということは、彼女は日本の文化に収まりきれない、国際的なスケールの芸術家だということを意味している。今年83歳になる彼女は、ニューヨークのホイットニー美術館の目玉となり、かつはルイ・ヴィトンとのコラボレーションを通じて、世界中のファッションを席巻しようとしている。彼女には老いるという言葉がなじまないのだ。
ヤヨイ・クサマが世界中の注目を浴びたのは、1960年代のことだ。当時世界のアート・センターだったニューヨークで、彼女はアヴァン・ギャルド・アーチストとしての名声を獲得した。彼女のアートは、サイケデリックな雰囲気に満ちていて、ヌードのパフォーマンス、柔らかい男根のオブジェ、そして独特な水玉模様が特徴だった。
彼女のアートがサイケデリックだったことには、それなりの背景があった。彼女は若年のころから統合失調症の症状に苦しみ、その病気の影響から逃れようとして、様々な工夫をしてきた。サイケデリックと言われるアートも、そうした彼女の個人的な戦いの一環だったという側面がある。
とりわけ彼女がこだわったのは、あの独特の水玉模様だった。水玉模様をいじくり回すことは、彼女にとっては精神的な安らぎをもたらしてくれることにつながった。だから彼女にとって芸術活動とは、生きることと密接にかかわる行為だったわけだ。
ヴィトンとのコラボレーションは、ヴィトンのデザイナー・マルク・ジャコブスが2006年に、東京まで彼女を訪ねてきたときから始まった。初めて会った時から、二人は互いにひきつけられあったという。
ジャコブスは、前衛的な芸術家とのコラボレーションで知られる。協働相手には日本の村上隆も含まれている。
彼女とのコラボレーションの中からは、例のみずたま模様をモチーフにしたアクセサリーやワンピースなどが人気の的になっているという。日本でも、伊勢丹の新宿店で7月いっぱい開かれていたから、足を運んだ人も多いと思う。(イラストはリカルド・ヴェッキオ作:Newsweek から)
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