腐敗する中国の官僚たち

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先日、中国に進出した日本企業王子製紙の排水問題をきっけかに、江蘇省南通市で住民暴動が勃発したが、それをを取材していた朝日新聞の記者が、地元の警察官から暴行を受け、カメラを略奪されるという事件が起こった。この事件に対して、朝日新聞社は外交ルートを通じて抗議したようだが、暴行を働いた警察官の特定など、はかばかしい成果は期待できそうもないようだ。

こうした事態が起こるのは、地方の官憲をはじめとした官僚機構に、自分たちの恥になるようなことを外部に知られたくないとする、強い意志が働いているからだと考えられる。そうした彼らの意向を、中国のメディアはよく理解していて、地方官憲の腐敗をすすんで暴こうとはしない。それ故、外国のメディアは、民衆の暴動や官憲の腐敗の事実が云々されるような事態が起こると、少ない情報を手掛かりに、手探りの中で取材を始めるわけだが、そうすると地方の官憲が立ちはだかって、彼らを追っ払うという構図がまかり通っている。

こうした構図に支えられてか、中国の官憲の腐敗ぶりにはすさまじいものがある。昨年夏の高速鉄道事故をめぐって、鉄道省のいい加減な仕事ぶりに批判が集まったところが、その鉄道省のトップをつとめていた劉志軍という男は、1億2000万ドルにのぼる賄賂を受け取っていたという。(その罪で昨年の2月に解任された)

とにかく中国の官僚の間にはびこっている、収賄や横領といった腐敗は、桁違いなものらしい。中国人民銀行の試算によれば、1990年代なかば以降、1万6000人の官僚が計1250億ドルにのぼる収賄や横領を行ったという。会計検査院は2005年の一年間だけで、補助金がらみで350億ドルが横領されたと試算している。一説によれば、こうした官僚たちの腐敗によって生じる損失は、GDPの3パーセントにも上るそうだ。

官僚が賄賂をとるのは、中国の政治文化にとっては、歴史に深く根ざしたところでもあり、簡単には撲滅できないことらしい。しかしそれが中国のイメージを大きく損なっているのもたしかなことだ。イメージを損なうどころか、官僚たちの腐敗は時には民衆の怨嗟の的となり、それがきっかけで大きな暴動騒ぎに発展することもある。

それでも官僚の腐敗はおさまらない。それどころか、劉志軍のようなビッグ・ケースから、末端の木端役人に至るまで、賄賂を取らなきゃ損だとばかり、露骨な腐敗活動が横行している。

先日北京が大洪水に見舞われた折には、北京空港に大勢の客が取り残されたが、彼らを助けるために空港高速道路を走った車に、罰金が科せられた。その罰金は高速道路を管理していた小役人のポケットに入ったそうだ。どんなことでも収入のタネにしようとする中国の役人たちの、逞しい根性がわかろうというものだ。

(参考)The Cost of Corruption By Melinda Liu Newsweek





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このページは、が2012年8月 4日 19:12に書いたブログ記事です。

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