ロンドン・オリンピック女子サッカー決勝戦なでしこ対アメリカの試合を、筆者は未明(3時半頃)に起きてテレビ観戦した。日頃応援しているなでしこたちの試合だ、早起きには弱い身でも、多少の無理をしても見なければならぬ、そんな風に思ってのことだった。
寝ぼけ眼をこすりながらスイッチを入れ、画面に見入っていると、開始後8分ごろに、アメリカの選手がゴール前でもつれていたボールをヘディングでシュート。思いがけず先制点を取られ、眠気はいっぺんにすっ飛んでしまった。
その後なでしこは猛攻を繰り返し、幾度かきわどいチャンスもあったが、結局得点できないまま後半戦に突入。その後半戦でも、開始後10分足らずで相手にミドルシュートをゆるし、一時は重苦しい雰囲気になったが、なでしこはすかさず反撃して、フォワードの大儀見がシュートを決め一点差に迫った。その一点差を追って、なでしこはまたもや猛攻を繰り出したが、遂に届かず2-1で敗戦した次第だった。
結果は銀メダルに終わったが、当のなでしこたちを含めて、だれも不満には思わないだろう。というのも、敗北に終わったとはいえ、なでしこはボール支配率でずっと勝っていたし、終始試合の主導権を握りながら、精一杯プレーしていたからだ。見ていた人も、プレーしたなでしこたちも、全力を尽くしたという、達成感があったと思うのだ。
それに、アメリカの方も、ボール支配率こそなでしこに及ばなかったが、少ないチャンスを確実にものにして得点に繋げたし、後半では得点追加のチャンスがいくつもあった。また、なでしこの猛攻をしのいだゴールキーパーのプレーも素晴らしかった。それ故、この試合は双方が死力を尽くしたうえでの結果だったと、だれにもそう思わせたと思う。
なでしこたちのプレーぶりは、イギリス人をも感激させたようだ。体格でははるかに勝る相手と、互角以上に戦う彼女たちの姿は、迫力を感じさせたに違いない。個人の能力では及ばないでも、それを集団の組織的な連携によってカバーする、なでしこならではの戦い方が、強烈な印象をもたらしたようだ。
なでしこに象徴される日本の女性たちの底力に対して、TIME誌はエールを贈っている。今回のオリンピックでは、日本のメダルは今のところ5つと、前評判には及ばない状態で、しかもこれ以上は期待できない中で、5つのうち4つを女性が獲得したことに、TIMEは日本のスポーツ界が女性上位であることに、注意を払っている。ことスポーツにおいては、女性の方が存分に能力を発揮しているというわけだ。
それなのに、日本がいまだ男尊女卑の陋習から脱し切れていないことは、先日サッカー日本代表の男女チームが同じフライトでロンドンに向かった時に、女性チームの方がエコノミークラスに座らせられたことに現れている。日本人は、オリンピックのような晴れやかな舞台で女性たちが活躍すると、そのたびに彼女たちに敬意を表するが、日常の生活に戻るや、すみやかにそのことを忘れ、男尊女卑の文化に違和感を覚えないというのだ。
しかし、なでしこたちがそんな境遇にも文句ひとつ言わないで、全力でプレーしてきたことは、ここに書くまでもない。
ともあれ、今回のなでしこの健闘には、万感の拍手を送りたいと思う。(写真はロイターから:1福元、2近賀、3岩清水、4熊谷、5鮫島、6阪口、8宮間、9川澄、10澤、11大野、17大儀見)