オリンピックも終末近くになったところで、ビッグニュースが舞い込んできた。女子レスリングで、三つの金メダルを獲得したというのだ。獲得したのは48キロ級の小原日登美、55キロ級の吉田佐保里、63キロ級の伊調馨の三人だ。吉田と伊調はオリンピック三連覇の偉業を成し遂げたことになる。
このうち、小原と伊調の試合ぶりを、筆者は健康診断のために訪れていた西船橋の病院のロビーで、録画の映像で見た。その前に、船橋の駅前を通りがかった時に、号令を配っている者がいて、その紙面に三連覇の文字が読み取れたので、伊調が勝ったらしいという推測はついていた。それがテレビで確認すると、伊調のほかに小原も金メダルを獲得したとわかり驚いた。
伊調の試合ぶりは申し分がなかった。フォールこそなかったが、試合を常に優勢で進め、文句なしの勝ちだった。
会場には姉の千春も来ていて、大声で応援をしていた。その声を妹の馨は天の声といい、その声に気持ちを奮い立たせて試合に臨んだと言っていた。これまで二人三脚でやってきたレスリングの試合を、今年は一人でやることになったが、競技場に姉の姿はなくとも、応援席にその声を確かめることができて、気分が奮い立ったというのだ。
小原はその伊調千春に替ってオリンピックのマットに立ち、見事初優勝を果たした。伊調千春がアテネ、北京とも銀メダルだったから、この階級では日本に初めて金メダルをもたらしたことになる。
一日遅れて吉田が金メダルをとった。こちらは実の父親がセコンド役について、なにかと娘を励ました。その甲斐あって吉田は金メダルを獲得し、コーチをマットに投げ飛ばして喜びを露わにしていたのが印象的だった。
女子レスリングがオリンピックの種目に加えられたのは2004年のアテネオリンピックからだ。それ以来今回で三大会目、そのいずれにおいても、日本の女子は大活躍をしている。
かつては男子の方も、レスリング強国を誇っていた時期があったが、いまではその面影はない。女子の活躍を横目に見るだけではなく、自分たちも金メダルを取るような意気込みを見せてほしいものだ。