プロ野球では、昨年のロッテ・オリオンズに続いて、今年も外国人監督ヒルマン氏率いる球団日本ハム・ファイターズが優勝した。球団にとっては、実に44年ぶりの日本一ということだ。北海道に移転して4年目、いまではすっかり地元に溶け込み、北海道の人々の熱い応援に答えての優勝だった。
ところで、ファイターズを優勝に導いたヒルマン監督は、インタビューに答えて、興味深いことを述べている。
ヒルマン監督が4年前に来日して、この球団の監督に就任した頃は、大リーグ流の野球にこだわって、選手にも自発的で自分で考えるプレーを求めた。ところが、なかなかうまくいかない。試行錯誤を繰り返しながら、少しずつ日本流の野球を取り入れるようにしたが、それは一言で言えば、監督が選手一人ひとりに具体的な役割を与えることだったという。
日本の選手は、監督から具体的な指示がないと、どうも不安になるらしい。指示があれば、その実現に向けて非凡な才能を発揮する。こう気づいてからは、ヒルマン監督はバントも多用するようにしたし、チームプレーの利点を最大限に生かすようにした。これは、個々の選手の自発性をなるべく尊重しようとする大リーグ野球とは、かなり異なったやり方だが、日本人選手の気質によく合っていると、ヒルマン監督はいう。
日本人の筆者としては、多少考えさせられる発言だった。
日産自動車を再建したカルロス・ゴーンも、やはり同じようなことをいった。日本人は自分で考えることは苦手だが、人から示された考えなり計画の実現に向かっては、非凡な能力を発揮すると。
確かに首肯せざるを得ない面もある。たとえば、経済活動ひとつとってみても、世の中が順調な時代には、行け行けドンドンで、前へ前へと進んでいけるが、ひとたび躓くと、どうしていいかわからなくなり、とたんに方向を見失って沈滞に陥る。ここ20年来の日本の姿が示しているところだ。
まるで、日本人兵隊蟻論を展開しているようだが、外国人からこんな感想をぶつけられなくてすむようになるためにも、日本人は己に対して、もっと自覚的になる必要があるのかもしれない。
話を野球に戻そう。今年は、プロ野球のフランチャイズ制について、大いに考えさせてくれた。
昨年のロッテもそうだったが、今年の日本ハムも、地元ファンの熱心な応援があったからこそ、存分な力を発揮できたのだろう。やはり地元のファンというものは、いいものなのだ。いまさら、大リーグを引き合いに出すまでもなく、地域に密着した球団のあり方がいかに大事なものか、ヒルマン監督率いる北海道日本ハム・ファイターズの優勝は、そのことを改めて考えさせた。