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吊るしのテクニック:残虐な絞首刑?


絞首刑の最中に首がちぎれ飛ぶこともあると聞き、驚いた。イラクで起きたことだ。昨年暮のサダム・フセインの処刑に続き、昨日(1月15日)は更に二人、前政権時代の高官が絞首刑に付されたが、その際、サダム・フセインの異父弟で秘密警察長官だったバルザン・イブラヒムの首が、吊るされた直後にちぎれ、頭部と胴体が分離してしまったというのである。

そのときの様子をニューヨーク・タイムズの記事が伝えている。絞首刑の現場には、サダム・フセインらを裁く法廷で主席検事を務めたアル・ムサウィ氏もいたが、彼によれば、処刑台のトラップドアが開いて死刑囚が奈落へ落ちた瞬間、バルザン・イブラヒムを吊るしていたロープは既に緩んでぶらぶらしていたという。氏はロープが首から外れたのかと思って、身を乗り出し、トラップドアの下を覗いてみると、床にはバルザンの頭部と胴体が別々に転がっていた。つまり、落下の衝撃で首が切断され、胴体と頭部とが別々に地上に落ちていったのである。

このことは、処刑当局に大変な動揺をもたらしたらしい。処刑後プレス発表までに7 時間もかかったというから、その動揺のほどが伺えよう。イラクのマリキ政権は、先般サダム・フセインを絞首刑に処した際、フセインへの対応が尊厳を失うやり方だったと、アメリカも含め世界中から批判されたので、今度こそは批判を受けることのないよう、万全の準備をしてきたはずだった。

アラブ世界では、死者の遺体を損壊することはタブーとされている。首を刎ねるというのは最大の侮辱に当たるらしい。

何故こんなことがおきたのか。処刑当局に、吊るしのテクニックが欠けていたことが原因だと、ニューヨーク・タイムズは分析している。

絞首刑を適切に執行するためには、死刑囚の体格や地球の重力の状態を勘案しながら、落下させる距離とそれに応じたロープの長さを決めなければならない。バルザン・イブラヒムの場合、落下の距離は8フィートだったという。また、バルザン自身の体格は中肉中背だったという。

アイゼンハワーが軍人時代に作ったという吊るし(=絞首刑)のマニュアルによれば、バルザン・イブラヒムほどの体格の人間は、5フィート半落下させて吊るすのが標準だそうだ。だから今回は十分すぎたということなのだろう。その結果力が加わりすぎて、首が吹っ飛んだのである。

マリキ政権の重ねての失態に、アラブを訪問中の米国務長官ライスも不快感を隠さなかった。アメリカは、自身もかかわったこの処刑が、残虐なイメージを帯びることに神経質になっているようだ。

これが引き金になって、スンニ派の人々の中に、報復への感情が高まることも心配される。


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