ヨーロッパの古い教会レストランに変身

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日本ほどではないかもしれぬが、西ヨーロッパ諸国でも、世俗化というか脱宗教化というか、教会離れの現象が進み、かつてのように教会に足を運ぶ人々はめっきり減ってしまったという。これに伴い、使われることのなくなった教会建築が数多く現れ、それらをどうするかが、ひとつの社会問題となっているらしい。

最近のニューズウィーク誌の記事”Europe's Old Churches Turn Into Bars, Eateries;By William Underhill”によれば、イングランドにある教会建築物のうち、1600以上(全体の約1割)が既に教会として使われていないという。これらの建築物は、放置していてはやがて倒壊する恐れがあるため、イギリス国教会は背に腹を代えられず、別の用途に貸し出しているそうだ。イギリスには近年イスラム教徒の数が増えていることを背景に、彼らのためのモスクに転用されることが多く、シーク教の礼拝堂などに用いられているものもある。

異なった宗派といえ、宗教的な目的のために転用されるのならまだしも、バーやレストラン、果てはアパートに転用されるケースもあるという。

同じような現象は、日常生活と教会との結ぶつきが伝統的に強いカトリック圏においても生じている。宗教意識の高いとされるフランスでさえ、いまや日曜のミサに通う人々は5パーセント以下に減ったといわれる。これに伴い、使われることのない教会建築物が無視できない数になってきた。

フランスでは、建築史上価値のある教会建築物は、法律によって保護される制度もあるが、それによってすべての教会が救われるわけではない。そこで、使われなくなった建築物にも教会側が金をかけて保存するか、思い切って解体するか、あるいは他の用途に転用することで建物としての寿命を長引かせるか、いづれかの選択を迫られるのである。

かくして、バーやレストランに変身した教会を、今日では西ヨーロッパのあちこちの国で見かけるようになった。こうした教会では、かつて祭壇のあった場所に、ピザを焼くための大きなオーブンが据えられていたりする。

こうした動きに対して、批判がないわけではない。世俗的な目的に転用するよりは、思い切って壊してしまったほうがすっきりするという意見も根強くある。プラハの旧市街の一角に、聖ミハイル聖堂という12世紀に建てられた古い教会があるが、昨年、政府は財政難を理由にこれを民間に売却しようとした。ところが売却先の企業がこの伝統ある建築物をストリップ劇場にしようとしているのを知った学生たちが、抗議のデモを繰り広げた。これなどは、使われなくなった教会の運命を物語る、笑えない話であろう。

一方、旧コミュミズム圏では、宗教の自由が開放されたことを背景に、礼拝堂の需要が高まっている。ロシアでは、コミュニズム政権の崩壊以降11000もの教会が建設された。また、ポーランドでは、新しい教会建築が作られる傍らで、古くなった教会が見捨てられているという。

宗教と市民生活との結びつきは、お国柄を反映して、多彩であるようだ。


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