食料が燃料に化ける:地球温暖化対策の罠

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雑誌タイムの最近号が地球温暖化対策を特集している。カバー・ストーリーでは温暖化対策の51の選択肢が載せられているが、そのトップを飾っているのはバイオ燃料、つまり食料の燃料化だ。

植物からエタノール燃料を取り出す技術が確立されて、今ではバイオ燃料は石油を補完する資源として期待されている。2酸化炭素の排出を抑えるという点では、地球温暖化対策の切り札の一つにもなっているわけだ。

原料には色々なものが考えられるが、今のところとうもろこしが主流だ。年間11億バレル(1バレルは22.5キログラムのとうもろこし)がエタノール化されるに至っている。

だが、とうもろこしに集中した結果、思いもかけぬ事態が生じている。とうもろこしの価格が急上昇して、採算がとれないようになってきたのだ。アメリカのエタノールプラントには多額の補助金が出ているから持ちこたえているようなものの、商業ベースで考えると、原料価格の高騰は、とうもろこしのエタノール化にブレーキをかけるだろう。

とうもろこし価格の高騰は、別のところでも深刻な影響を及ぼしている。とうもろこしの主な供給国は中南米だが、彼らはとうもろこしを主食にしているので、その影響をもろに受けるからだ。

その様子を、先日のNHKテレビが放送していた。中南米の人々は、とうもろこしの粉を練って焼いたトルティーヨという食べ物を、主食としている。餃子の皮を大きくしたような食べ物だ。それに肉などを挟んで食べる。それが原料価格の高騰によって、7割以上も値上がりしたといって、人々は途方にくれた表情をしていた。先進国による資源開発が、農業国の人々から食料を奪い取っているのである。

現在のところ、とうもろこしのほかにも、大豆、廃食用油、家庭から出る残飯などが原料として期待されているが、商業ベースに乗るまでには至っていない。技術開発をはじめ抜本策が出てこないと、行き詰まりになる恐れがある。

水素燃料やハイブリッドエンジンなど、代替技術の開発も急がれるところだ。


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