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アメリカ人の九割が神を信じている


アメリカ大統領ブッシュの信仰心は有名だ。信仰深い彼の姿は現在に生きるアメリカ人を象徴している。あらゆる点で地球の今をリードしているアメリカ人だが、こと信仰に限っては、彼らほど保守的な国民はない。

ニューズウィークが先日実施した世論調査によれば、アメリカ人の実に91パーセントが神の実在を信じている。何らかの宗教団体に属しているものは87パーセント、最も多いのはもちろんキリスト教徒で82パーセントを占める。

人口の半数近い48パーセントの人が、ダーウィンの進化論を排斥しており、大学卒業生の三分の一が、聖書の天地創造説を事実だと考えている。特に信心深いとされるプロテスタントの福音主義者にいたっては、73パーセントもが、人間は神が自身の姿に似せて作り給うたのだと信じているそうだ。

先稿「ヨーロッパの古い教会レストランに変身」の中で、西ヨーロッパでは教会離れが進行していることについて紹介した。教会離れと無信仰とは即一致しないだろうが、従来に比較して人々の信仰心が薄まってきていることのバロメーターにはなる。そんな西ヨーロッパの宗教的現状と比較すれば、アメリカ人の信仰深さは驚くべきことといえる。

アメリカ人がどれくらいの頻度で教会に足を運んでいるかは、この調査では明らかではない。上記の数字から類推すれば、ヨーロッパよりははるかに頻度が高いに違いない。アメリカ人の信仰は科学知識よりも聖書の記述を優先するような、確固とした世界観のレベルにまで達しているようだから、教会の権威もまだまだ健在だろうと思われるのだ。

ことほどアメリカとは、文明と信仰が同居する不思議な国といえるようだ。あの9.11事件の際、ニューヨークの町の中を逃げ惑う人々が、口々に”Oh My God” と叫んでいたのを、筆者などはテレビ画面で目にしながら、一種の感銘を受けたものだが、それはある意味で、今日のアメリカを象徴するシーンだったともいえる。

一方、自分は無宗教だと答え、なおかつ神の存在を全く信じないと答えたものは、6パーセントに過ぎなかった。

アメリカは、かつては無神論者に対して不寛容な社会だといわれた。今日では宗教上の寛容が広まっているようで、半数近い人が無神論者の存在を許容すると答えている。アメリカ社会の方向性に宗教が影響を及ぼしすぎていると考えている人も多いというから、アメリカ人は一方で宗教深くありながら、他方では、宗教が政治の行方に影響を行使することまでは望んでいないようだ。アメリカらしいバランス感覚が働いているのかもしれない。

そうはいっても、アメリカ人にはいまだに、きわどい選択を迫られた際には、宗教的な感性を優先させるところが強い。たとえば、公職選挙について聞くと、大部分の人は、無神論者には投票したくないと答えている。

アメリカ人は、宗教的寛容の精神から無神論者を許容しても、そういう人を心から信頼することはできないのだ。アメリカ人の信仰心は筋金入りなのである。

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