死のロンド(ヴィヨン:遺言の書)

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ロンドは「輪舞曲」と訳される。ルフランを規則的に配して、回遊式の体裁に仕立てたものだ。西洋音楽の一ジャンルとして古くからあった。ヴィヨンの時代にも、小唄の一つの形式として、広く行われていたらしい。

「死のロンド」は、愛人の死をロンド形式で歌ったもの。愛するものを失った男の嘆きが、ルフランの繰り返しの中で、効果的に歌われている。

詩の内容が事実に基づいたものなのかどうか、詳しいことはわからない。だが、ヴィヨンが生きたヨーロッパの中世社会は、黒死病といわれて恐れられたペストをはじめ、疫病が度々人びとを襲い、そのたびに何万人という人が死んだ。だから、この詩にあるような死のイメージは、彼らヨーロッパの中世人にとっては、日常的に起こりうる、無論おぞましいことではあるが、なじみ深い事柄でもあった。


(死のロンド:拙訳)

  死よ、俺は汝を無慈悲と呼ぶ
  愛する女を俺から奪った汝
  それでもまだ満足せぬのか
  俺が悲しみに打ちのめされるまで

  女が死んでからの俺は抜け殻も同然
  あいつがお前に何をしたのだ
  死よ、俺は汝を無慈悲と呼ぶ
  愛する女を俺から奪った汝

  女と俺とは心も一つ
  あいつの心が死んだいま
  俺の心も生気を失い
  青銅のようになるだろう

  死よ、俺は汝を無慈悲と呼ぶ
  愛する女を俺から奪った汝
  それでもまだ満足せぬのか
  俺が悲しみに打ちのめされるまで


(フランス語原文)
Grand Testament : Rondeau De La Mort

  Mort, j’appelle de ta rigueur,
  Qui m'as ma maîtresse ravie,
  Et n'es pas encore assouvie
  Se tu ne me tiens en langueur:

  Depuis lors, je n'eus ni force ni vigueur;
  Mais que te nuisoit elle en vie,
  Mort, j’appelle de ta rigueur,
  Qui m'as ma maîtresse ravie,

  Deux étions et n’avions qu’un coeur;
  S’il est mort, force est que je dévie,
  Voire, ou que je vive sans vie
  Comme les images, par coeur,

  Mort, j’appelle de ta rigueur,
  Qui m'as ma maîtresse ravie,
  Et n'es pas encore assouvie
  Se tu ne me tiens en langueur:


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