ネアンデルタール人の滅亡:気候変動が原因か

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ネアンデルタール人は、ホモ・サピエンスと共通の祖先から生まれた。だから我々の直接の先祖たる古代の人類にとっては、兄弟に当たる種だとするのが今日の通説である。

ネアンデルタール人が生まれたのは、20万年以上も前のことらしいから、ホモ・サピエンスよりは10万年以上も古い。兄弟といっても、頭蓋骨や骨格の形状にかなりの違いがある。そして、2万年以上前に地球上から絶滅したと信じられている。

ネアンデルタール人が滅亡した原因については、従来、ホモ・サピエンスによって絶滅させられたとする説と、そうではなくホモ・サピエンスと混血して、別の形で生き残ったとする説があった。

これらの説と対立するわけではないが、気候の変動が彼らを滅亡に追いやったとする新しい説が、最近提出された。Climate Change, Not Humans, trounced Neanderthals By Dave Mosher : LiveScience

スペインの古気象学者ヒメネス・エスペーホ Francisco Jimenez-Espejo 教授のグループは、最後のネアンデルタール人が暮らしていたイベリア半島の古代における気象変動を分析し、それをもとに、ネアンデルタール人が厳しい気候の変動に適応できずに滅亡したとの仮説に到達した。教授たちの発表は、気候変動の影響に関する国際会議IPCCが開催されている時期にあたっていたから、我々現代に生きる人間への警鐘とも聞こえた。

教授たちの研究によれば、イベリア半島は、26万年前から2万年前までの期間の中で、3度の気候変動に見舞われた。そのうち26000年前に起きた気候変動は、厳しい寒さと乾燥を伴い、動物の生存を脅かすほどのものだった。イベリア半島に生息していたネアンデルタール人は、この寒さに耐える能力を十分に備えていなかったのではないか。一方ホモ・サピエンスの方は、シベリア経由でアメリカ大陸に移動したりして、氷の中でも生き抜く力をもっていた。これがネアンデルタール人とホモ・サピエンスの命運を分けた理由ではなかったかと、教授たちは考えたのである。

とはいえ、教授たちは従来の仮説を否定する訳ではない。気候の変動だけがネアンデルタール人滅亡の理由とはいえないかもしれないが、その主なファクターのひとつになったという立場のようだ。

ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの混血については、ワシントン大学のトリンカウス Erik Trinkaus 教授による実証的研究がある。Humans and Neanderthals might have interbred By Andrea Thompson : LiveScience

トリンカウス教授らは、ルーマニアで発見された古代の人骨を分析した結果、それがネアンデルタール人の特徴を帯びていることを根拠に、両者の混血を実証したと主張している。これを足がかりに、今日の人類の中には、ネアンデルタール人を先祖に持つグループも多数いるに違いないと推測している。

教授らが念頭に置いているのはヨーロッパ人のようだ。ネアンデルタール人の頭蓋骨の形状は、今日のヨーロッパ人種に似ているところがあるともいわれているから、あるいはそうなのかもしれない。

今後遺伝子レベルの研究が進めば、ネアンデルタール人の謎も、おいおい解明されてくるだろう。


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