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夏の感触:アルチュール・ランボー初期の詩


早い時期から天才を示したアルチュール・ランボーは、15歳の頃から今日に伝わる優れた詩を書き始めた。1870年の1月に、ジョルジュ・イザンバールがランボーの通う中学校に、修辞学の教員としてやってきて、ランボーを本格的に指導したことが、彼の才能に火をつけたようだ。

今に残されているランボーの詩の中で、最も早い時期に書かれたものに、Sensationがある。15歳の3月に書かれたものだが、ランボーは夏の一日を想定して、自分がジプシーのように放浪する姿を詩に描いている。

わずか2節の短い詩であるが、後に放浪の詩人として生涯を送ることとなるランボーの運命を予感させるような、感性に満ちた作品である。


(夏の感触:拙訳)

  夏の青い黄昏時に 俺は小道を歩いていこう 
  草を踏んで 麦の穂に刺されながら
  足で味わう道の感触 夢見るようだ
  そよ風を額に受け止め 歩いていこう

  一言も発せず 何物をも思わず
  無限の愛が沸き起こるのを感じとろう
  遠くへ 更に遠くへ ジプシーのように
  まるで女が一緒みたいに 心弾ませ歩いていこう

Sensationは、直訳では「感覚」となるが、ここでは詩の持つイメージを大事にして「夏の感触」とした。


〔フランス語原文〕
: Arthur Rimbaud Mars 1870.

  Par les soirs bleus d'été, j'irai dans les sentiers,
  Picoté par les blés, fouler l'herbe menue :
  Rêveur, j'en sentirai la fraîcheur à mes pieds.
  Je laisserai le vent baigner ma tête nue.

  Je ne parlerai pas, je ne penserai rien :
  Mais l'amour infini me montera dans l'âme,
  Et j'irai loin, bien loin, comme un bohémien,
  Par la nature, heureux comme avec une femme.


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