尻の穴のソンネ:ランボーとヴェルレーヌ

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1871年9月にポール・ヴェルレーヌを訪ねてパリにやってきたランボーは、ヴェルレーヌの妻マチルドに嫌われ、あちこちと知人たちの家に居候しながら、その日暮しを始めた。これ以後、1873年7月に訣別するまで、ランボーはヴェルレーヌと深い関係を続けるのである。

ヴェルレーヌはすでにひとかどの詩人として認められ、「醜いが気のいい男たち」と名乗る高踏派の詩人たちと付き合いがあった。ランボーもヴェルレーヌを通じてこの詩人たちと交友したようだが、生来粗暴なランボーは、詩人たちの集まりの席上傷害沙汰を引き起こし、グループから嫌われた。

このグループが詩を寄せ合って詩集を刊行した際、ランボーも作品を寄せた。「尻の穴のソンネ」はその時のものだが、これはアルベール・メラの詩「アイドル」をパロディ仕立てにしたものであった。

肛門愛自体は、ランボーの生来の性癖であるが、自分の詩が「尻の穴」のパロディにされてしまったメラは激怒したようだ。


―尻の穴のソンネ(拙訳)

  世に尻の穴ほど妖しいものはない
  皺だらけのコケにまみれて
  時に息づき 時に濡れて
  臀部の谷間に埋没する

  繊毛はミルクの涙のようだ
  香ばしい屁の煙に吹かれて
  赤らびた肉塊の周りになびき
  臀部の奥に埋没する

  尻の穴が開くさまを俺は夢見る
  肉と肉の結合を求めて
  この穴をしずくと咽びで満たそう

  熱狂するオリーヴ 甘ったれのフルート
  茶色いアーモンドをひり出す管よ
  湿っぽく閉ざされた女々しい休息の地よ


(フランス語原文)
Sonnet du Trou du Cul : Arthur Rimbaud

  Obscur et froncé comme un oeillet violet
  Il respire, humblement tapi parmi la mousse.
  Humide encor d'amour qui suit la fuite douce
  Des Fesses blanches jusqu'au coeur de son ourlet.

  Des filaments pareils à des larmes de lait
  Ont pleuré, sous le vent cruel qui les repousse,
  À travers de petits caillots de marne rousse
  Pour s'aller perdre où la pente les appelait.

  Mon Rêve s'aboucha souvent à sa ventouse ;
  Mon âme, du coït matériel jalouse,
  En fit son larmier fauve et son nid de sanglots.

  C'est l'olive pâmée, et la flûte caline ;
  C'est le tube où descend la céleste praline :
  Chanaan féminin dans les moiteurs enclos !

                Albert Mérat P.V.-A.R.


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