古の吟遊詩人の声(ブレイク詩集:無垢の歌)

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ウィリアム・ブレイクの詩集「無垢の歌」から「古の吟遊詩人の声」 The Voice of the Ancient Bard (壺齋散人訳)


古の吟遊詩人の声

  楽しそうな青年よ こちらへ来て
  朝日の昇るさまを見よ
  そこには生まれたばかりの真実がある
  疑いも 理屈の雲も
  言い合いも 嘲笑もない

  愚かさとはゴールのない迷路
  絡み合いもつれた道だ
  なんと多くの人々が迷い込み
  一晩中歩き回っては死者の骨に躓いたことか
  それなのに自分には分別があると思い込み
  他人を導いてやりたいなどとうぬぼれる

この詩は古の吟遊詩人の声を通して、無垢の尊さと賢しらな知の愚かさを説いたものだ。古の吟遊詩人には、預言者のイメージとともに神の知恵が伺われる。ブレイクのひとつの特徴である精神性が、表面に現れた作品といえよう。

詩の本文はもともと区切りのない一連の文章であるが、内容は前後二つに分かれる。前半では無垢の知を生まれたばかりの真実に喩え、後半では賢しらな知を迷路に喩えている。

愚かな人々は迷路の中で道を失い、死者の骨に躓くばかりなのに、自分は正しい道を進んでいると思い込んでいる。加えて、他の人々まで導いてやりたいなどとうぬぼれる。ブレイクはそうした人々の愚かさを訴えているのである。


The Voice of the Ancient Bard William Blake

  Youth of delight, come hither,
  And see the opening morn.
  Image of truth new-born.
  Doubt is fled & clouds of reason,
  Dark disputes & artful teazing.

  Folly is an endless maze.
  Tangled roots perplex her ways.
  How many have fallen there!
  They stumble all night over bones of the dead,
  And feel they know not what but care,
  And wish to lead others, when they should be led.


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