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よく見る夢(ヴェルレーヌ:サチュルニアン詩集)


サチュルニアン詩集はヴェルレーヌにとっては思春期以降の詩作の総決算であったから、その中にはさまざまな要素が含まれている。中心をなすのはエリーゼへの愛であるが、そのほかの作品にも女への愛を歌ったものが多かれ少なかれ見出される。

「よく見る夢」はヴェルレーヌの初期を代表する作品の一つだ。ここに歌われている女が誰であるのか、いろいろな詮索がなされてきた。エリーザだろうとする見方、他の女だろうとする見方、あるいはヴェルレーヌの抱いた妄想の女だろうとする見方、さまざまだ。

なかには、これは女ではなく、ヴェルレーヌがひそかに恋焦がれた少年だったのではないかとの、うがった見方もある。


―よく見る夢(拙訳)

  しばしばわたしは夢見るのだ 
  風変わりで心にしみる ひとりの見知らぬ女の夢 
  現れるたびに姿を変え 同じ人とは思えぬながらも
  わたしを愛し受け入れてくれる

  彼女はわたしを受け入れてくれる
  わたしの心も透明になって 彼女の前に捧げられる
  血の気もなく冷や汗がにじんだわたしの額も
  彼女の涙に抱擁されて慰められる

  彼女の髪が何色だったか 茶かブロンドか はた又赤毛か
  その名はなんといったものか 定かには覚えぬながら
  甘く切なく朧なところが悲しい定めを暗示させた

  彼女のまなざしはそも彫刻の人の目のよう
  遠く静かにまた厳かに響く声には
  自ら命を絶った人の高貴な調べが籠もっていた


(フランス語原文)
Mon rêve familier Paul Verlaine

  Je fais souvent ce rêve étrange et pénétrant
  D'une femme inconnue, et que j'aime, et qui m'aime
  Et qui n'est, chaque fois, ni tout à fait la même
  Ni tout à fait une autre, et m'aime et me comprend.

  Car elle me comprend, et mon coeur, transparent
  Pour elle seule, hélas ! cesse d'être un problème
  Pour elle seule, et les moiteurs de mon front blême,
  Elle seule les sait rafraîchir, en pleurant.

  Est-elle brune, blonde ou rousse ? - Je l'ignore.
  Son nom ? Je me souviens qu'il est doux et sonore
  Comme ceux des aimés que la Vie exila.

  Son regard est pareil au regard des statues,
  Et, pour sa voix, lointaine, et calme, et grave, elle a
  L'inflexion des voix chères qui se sont tues.


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