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バルコニーにて(ヴェルレーヌ:女の友達)


「女の友達」はヴェルレーヌの第2詩集である。わずか6篇のソネットから成るこの小さな詩集を、ヴェルレーヌがどんな意図から世に出したのか。すでに第一詩集「サチュルニアン詩集」によって、独自の世界を築いていたヴェルレーヌは、自分の世界をもっと確かな形にしようと思ってこの詩集を編んだのかもしれない。

これは副題に「サッフォー風の恋愛場面」とあるとおり、レズビアンの愛を歌ったものだ。ヴェルレーヌには、子どもの頃から同姓愛への嗜好というべきものがあった。彼はゲイとしては、女の同性愛には本質的な関心は持たなかったのかもしれないが、同じ同性愛者としては、いくばくかの同情は抱いていたのであろう。

この詩集に描かれているのは、女同士の戯れではあるが、ヴェルレーヌはそこにゲイの世界をも盛り込もうとしたのだろう。

この詩集は、それなりに強烈な反響をよんだらしい。リヨンの裁判所から発禁処分を受けたのをみても、その反響の程は察せられる。


バルコニーにて(拙訳)

  飛び去る燕を眺めていた二人の女
  漆黒の髪には青ざめた顔 ブロンドには血潮の色
  薄絹の軽やかな浴衣は雲のように
  女たちの肉の周りに絡まりつく

  シャグマユリの風情よろしく倦怠につつまれながら
  やさしい満月が夜空に昇るのを眺めつつ
  夜の如く深い愛と 悲しくも幸ある契りを
  心ゆくまで味わっていた

  互いの腰を抱きあった二人の腕には汗がにじむ
  この不思議なカップルは 世の人にさげすまれながら
  かくのごとくバルコニーにあって 果て無き夢を夢見みるのだ

  二人の背後 寝室の小暗き奥には
  メロドラマの玉座のように仰々しく
  寝乱れて女の匂い漂うベッドが闇の中に浮き上がる


Sur le balcon

  Toutes deux regardaient s'enfuir les hirondelles :
  L'une pâle aux cheveux de jais, et l'autre blonde
  Et rose, et leurs peignoirs légers de vieille blonde
  Vaguement serpentaient, nuages, autour d'elles.

  Et toutes deux, avec des langueurs d'asphodèles,
  Tandis qu'au ciel montait la lune molle et ronde,
  Savouraient à longs traits l'émotion profonde
  Du soir et le bonheur triste des coeurs fidèles,

  Telles, leurs bras pressant, moites, leurs tailles souples,
  Couple étrange qui prend pitié des autres couples,
  Telles, sur le balcon, rêvaient les jeunes femmes.

  Derrière elles, au fond du retrait riche et sombre,
  Emphatique comme un trône de mélodrames
  Et plein d'odeurs, le Lit, défait, s'ouvrait dans l'ombre.


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