ヴェルレーヌ:言葉なき恋歌 Romances sans Paroles

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詩集「言葉なき恋歌」 Romances sans Paroles は、ヴェルレーヌがランボーとの痴話げんかがもとでモンスの刑務所に服役している間に出版された。時に1974年3月。ヴェルレーヌはまだ30歳になっていなかった。

出版する以前、1872年の12月に、ヴェルレーヌはこの詩集に収められた詩の大部分を友人に送り、出版したい旨を依頼しているから、これらが書かれたのはランボーとの出会い前後のことだと推測される。

ランボーとの共同生活に入ってからは、旺盛な詩作活動はしていないようである。それはランボーも同様だった。お互い、別れて頭が冷えてから、それぞれに自分の集大成とも言える詩集を書いているのである。

「物憂き恍惚」という詩は、ヴェルレーヌの代表作の一つに数えられているが、これを書いたのはランボーとの出会い以前のことだったかもしれない。


―物憂き恍惚(拙訳)

  それは物憂き恍惚
  けだるき愛
  そよ風に揺られて
  木々は震える
  それは灰色の枝に響く
  ひめやかな声

  かよわき枝のささやきよ
  汝のささやき 汝のつぶやき
  それは葉より漏れる
  せつなき叫びを思わせる
  汝は叫ぶ ほとばしる水の下の
  小石のごとき静けさもて

  嘆きの心は今まさに
  嘆きのうちに眠らんとす
  それはわたしたちの心
  わたしの そしておまえの心
  切れ切れとした祈りの調べが
  生暖かい夕べに響く


C'est l'extase langoureuse : Paul Verlaine

 C'est l'extase langoureuse,
  C'est la fatigue amoureuse,
 C'est tous les frissons des bois
 Parmi l'étreinte des brises,
 C'est, vers les ramures grises,
 Le choeur des petites voix.

 O le frêle et frais murmure!
 Cela gazouille et susurre,
  Cela ressemble au cri doux
 Que l'herbe agitée expire...
 Tu dirais, sous l'eau qui vire,
 Le roulis sourd des cailloux.

 Cette âme qui se lamente
 En cette plainte dormante
 C'est la nôtre, n'est-ce pas?
 La mienne, dis, et la tienne,
  Dont s'exhale l'humble antienne
 Par ce tiède soir, tout bas?


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