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ヴェルレーヌ:叡智 Sagesse


1873年の夏に、ランボーとの間に引き起こした事件がもとで、ヴェルレーヌは1年半余りモンスの刑務所に服役した。この間にヴェルレーヌは信仰上の回心を体験し、カトリックに深く帰依するに至る。そしてその信仰を膨大な詩に残した。詩集「叡智」に収められた作品群がそれである。

「叡智」の作品群は、1873年から1878年にかけて書かれた。そして1880年に自費出版された。大変な反響を巻き起こしたらしく、ヴェルレーヌの詩人としての名声を確立するのに決定的な役割を果たした。

詩集前半の作品は監獄の中で書かれたものである。ここに取り上げる「屋根の上なる大空」は、独房の窓越しにみた町の様子に重ねて、自らの心のうちを歌ったものだ。

ヴェルレーヌの傑作のひとつに数えられている。


屋根の上なる大空(拙訳)

  空は屋根の上にありて
  青く静かに澄み渡る
  木は屋根の上にありて
  ゆらゆらと枝を揺する

  鐘は空の彼方に
  やさしくも響き渡る
  鳥は梢の彼方に
  嘆きの歌を歌う

  神よ 我が神よ 人生は
  何事もなく静かに過ぎ行く
  かの平和なささやきは
  街の方より聞こえきたる

  何をしたといって そこなる君よ
  さめざめと泣き続けるのか
  何をしたというのだ そこなる君よ
  悔い改めるに遅すぎはしない


Le ciel est par-dessus le toit

  Le ciel est, par-dessus le toit,
  Si bleu, si calme !
  Un arbre, par-dessus le toit,
  Berce sa palme.

  La cloche, dans le ciel qu'on voit,
  Doucement tinte.
  Un oiseau sur l'arbre qu'on voit
  Chante sa plainte.

  Mon Dieu, mon Dieu, la vie est là
  Simple et tranquille.
  Cette paisible rumeur-là
  Vient de la ville.

  Qu'as-tu fait, ô toi que voilà
  Pleurant sans cesse,
  Dis, qu'as-tu fait, toi que voilà,
  De ta jeunesse ?


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