ビューティー・ウォーズ:美肌へのこだわり

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日本女性の美肌へのこだわりは、世界でも例を見ないほど熱心なものだそうだ。いつまでも若々しく美しい肌を保ちたいという願望は、世界中どこの女性でも共通のものだとは思うのだが、日本人女性の場合は、その願望が度を越して強いということらしい。

肌の老化を防止し、若々しさ、みずみずしさを保とうとする努力をアンチエイジングという。これは主に化粧品と肌のマッサージに左右されるが、決め手はどんなものを顔に塗るかである。最近では、既存の化粧品に飽き足らず、自分で成分を配合するような、高度な知識をもった女性も増えつつある。彼女らにとって、美は自らの努力で勝ち取るべきものなのだ。

そんな女心をとらえて、いまや化粧品業界では企業間に激烈な競争が繰り広げられている。なにしろ数兆円規模の巨大な市場であるから、一発当てれば利益は巨額なものになるのである。

こうした女性たちの美肌への願望と、それを巡って企業が繰り広げている競争の様子をNHKの報道番組が伝えていた。題してビューティー・ウォーズという。

番組はまず、肌の手入れに努力している女性とそうでない女性とで、どんな違いが現れるかを紹介する。努力している人は、50歳、60歳になっても、みずみずしい肌を保っていられる。70歳を超えてなお、肌にしわを感じさせない女性までいるのだ。

若い女性はエネルギーに満ち、その肌はゴムまりのようにピチピチとして張り詰めている。ところがやがて年とともに、肌にしまりがなくなり、皺ができたり顎や頬がたるんだりする。これは弾力性を失った肌が、筋肉の重みを受け止められないことに起因する。その結果筋肉は重力に逆らえず、地面の方向へと垂れ下がっていく。垂れ下がれば当然皺がよるし、オカメのような下膨れの面相をもたらすというわけである。

したがって美肌術の眼目は、肌に地球の重力に耐えられるだけの弾性を取り戻させることにある。それには肌の組織成分を薬理的に改善する方法と、マッサージによって物理的に矯正する方法がある。かしこい女性たちは普通、この両者を組み合わせて用いている。つまり肌によろしい化粧水をコットンに含ませ、それでもって下から上へと皮膚をマッサージするのである。

テレビの映像は、この化粧水によるマッサージ効果によって、見違えるようにすべすべになった女性たちの肌を映し出していた。

女性の肌を滑らかにする薬理成分としては、ヒアルロン酸、コエンザイム、コラーゲンなどが知られている。最近の化粧品はこれらの薬理成分を調合して用いているが、その効用や副作用は用いる人によって様々なようだ。女性たちは自分に適したものを探すうち、化粧品メーカーもたじたじするほど、豊富な知識を身につけるに至っている。

このほかにも、自然界には皮膚の代謝に効果のある物質が数多く存在するようだ。日本の化粧品メーカーは、そうした魔法の薬草を求めて、海外にまで出かけている。映像はマダガスカルの現地住民の知恵をかりて、人の健康に効果のありそうな草を採集するところを映していた。

ところで、こんなにも肌の手入れにこだわる女性は、ヨーロッパにはいないそうだ。ヨーロッパでは、化粧品といえば、肌を厚く塗りつぶす塗料のようなものか、あるいは体臭をカバーするオーデコロンが主流で、日本のように肌の手入れを目的にした化粧水はほとんど存在しない。ヨーロッパの一流ブランドが日本で苦戦を強いられているのは、こうした事情によるのだという。

かように日本女性の美肌願望は、文化を超えて信仰の域にまで入っているようだ。だがそれを笑うことは誰にもできまい。男たちも恋人や配偶者の肌が、しわくちゃであるより、すべすべしているほうがうれしいだろう。

美肌術はなにも女性固有のものと限ったことではあるまい。男といえども実践して悪いという話はない。筆者も60の年を前にして、最近両目の下がたるんできたのが気にかかっている。

どれ、女性たちに倣って、美肌術でも試してみるか。


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    このページは、が2007年9月29日 17:53に書いたブログ記事です。

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