ウィリアム・ブレイクの詩集「無垢の歌」 Songs of Innocence から「子羊」の歌 The Lamb 〔壺齋散人訳〕
子羊
可愛い可愛い子羊ちゃん
誰がお前を作ったの?
そんなに可愛く生き生きと
小川や野原を歩き回って
誰がお前にふさふさと
やわらかい毛皮をかぶせたの?
誰が谷間に響き渡る
愛らしい声を贈ったの?
可愛い可愛い子羊ちゃん
誰がお前を作ったの?
可愛い可愛い子羊ちゃん
私が教えてあげましょう
お前の名前で呼ばれてる
主こそがお前を作ったの
主はおとなしく温和な方
小さな子として生まれるの
私は子ども お前は子羊
私たちはみな主の子ども
可愛い可愛い子羊ちゃん
神様の祝福がありますように
羊はブレイクの詩の世界を代表する動物だ。草原をのんびりと闊歩し、時には小鳥たちと戯れ、人の心をも和ませてくれる。平和の象徴とも言うべき存在なのだ。だから、ブレイクの詩には、他のどんな動物よりも、羊が多く登場する。
ブレイクの時代のイギリスには、いたるところ羊があふれていた。地主の囲い込みによって、イギリス中の土地が羊を飼うための牧場にされてしまったからだ。だから穿った見方をすれば、ブレイクは当時の社会現象を正直に受け止めていたということもありうる。
この詩は、羊に呼びかけながら、羊も人間も神様が姿を変えたものだと歌っている。ブレイクは生き物にとどまらず、草や木も含めてあらゆる自然の事象に、神のイメージが宿っていると考えていた。
The Lamb William Blake
Little lamb, who made thee?
Does thou know who made thee,
Gave thee life, and bid thee feed
By the stream and o'er the mead;
Gave thee clothing of delight,
Softest clothing, woolly, bright;
Gave thee such a tender voice,
Making all the vales rejoice?
Little lamb, who made thee?
Does thou know who made thee?
Little lamb, I'll tell thee;
Little lamb, I'll tell thee:
He is called by thy name,
For He calls Himself a Lamb.
He is meek, and He is mild,
He became a little child.
I a child, and thou a lamb,
We are called by His name.
Little lamb, God bless thee!
Little lamb, God bless thee!
関連リンク: 英詩のリズム>ブレイク詩集「無垢の歌」