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三つの鐘 Les Trois Cloches:ピアフ


エディット・ピアフ Edith Piaf が歌ったシャンソン「三つの鐘」 Les Trois Cloches (壺齋散人訳)


三つの鐘

  谷間の底の
  小さな村で
  星空の下
  生まれた子ども
  ジャン・フランソア・ニコ
  愛らしいあなたは
  洗礼を受けに
  ここにきました

  鐘がなります
  こだまとなって
  それはあなた
  ジャン・フランソアのため
  生まれたあなたを
  迎える響き
  か弱くそして
  可愛いあなた

  谷間の底の
  さびしい村で
  19才の
  ジャン・フランソアは
  桃のような
  乙女エリーズと
  神の前で
  愛を誓った

  鐘が鳴ります
  こだまとなって
  二人のために
  すべての鐘が
  若者と乙女
  二人の心が
  ひとつとなって
  愛の炎を
  燃やし続けよ

  谷間の底に
  月日は流れ
  星空の下
  魂は眠る
  ジャン・フランソア・ニコ
  あなたは安らぎ
  神の前に
  召されていきます

  鐘が鳴ります
  風に乗って
  高らかといつまでも
  生ける者に呼びかける
  嘆くなかれ
  死者はここに
  天使となって
  永久(とわ)に生きます

「三つの鐘」は1945年に発表されたエディット・ピアフのシャンソンで、作詩はベルト・ライスフェルト Bert Reisfeld、作曲はジャン・ヴィラール・ジル Jean Villard-Gilles である。

前段を男性コーラス、後段をピアフが歌うという形式で、それを3回繰り返す。コーラスは賛美歌の調べを取り入れており、フランス人にはなじみの深いものだ。そのため、戦後の荒廃の中で、この歌は人々の荒れた心を和らげたといわれる。日本でいえば、「りんごの歌」のようなものだった。

歌の内容は、谷間を舞台に人の一生を歌ったものだ。生まれて、愛して、死ぬ。このサイクルを鐘の音に重ね合わせて歌う。この歌が流れた時代は、フランス人にとっては第二次世界大戦で死んでいった若者たちの記憶が満ち満ちていた時代だった。ジャン・フランソア・ニコの愛と死は、そんな若者たちの愛と死に重なっていたのだ。

三つの鐘とは、文字通りの鐘の数ではなく、生まれて、愛して、死んだ、この三つの節目にそれぞれ鳴り響いた鐘という意味なのである。

なお、「谷間に三つの鐘が鳴る」とも訳される。


Les Trois Cloches

  Village au fond de la vallée,
  Comme égaré, presqu'ignoré.
  Voici qu'en la nuit étoilée
  Un nouveau-né nous est donné.
  Jean-François Nicot il se nomme.
  Il est joufflu, tendre et rosé.
  A l'église, beau petit homme,
  Demain tu seras baptisé.

  Une cloche sonne, sonne.
  Sa voix, d'écho en écho,
  Dit au monde qui s'étonne:
  "C'est pour Jean-François Nicot.
  C'est pour accueillir une âme,
  Une fleur qui s'ouvre au jour,
  A peine, à peine une flamme
  Encore faible qui réclame
  Protection, tendresse, amour."

  Village au fond de la vallée,
  Loin des chemins, loin des humains.
  Voici qu'après dix-neuf années,
  Cœur en émoi, le Jean-François
  Prend pour femme la douce Elise,
  Blanche comme fleur de pommier.
  Devant Dieu, dans la vieille église,
  Ce jour, ils se sont mariés.

  Toutes les cloches sonnent, sonnent,
  Leurs voix, d'écho en écho,
  Merveilleusement couronnent
  La noce à Jean-François Nicot.
  "Un seul cœur, une seule âme",
  Dit le prêtre, "et, pour toujours,
  Soyez une pure flamme
  Qui s'élève et qui proclame
  La grandeur de votre amour."

  Village au fond de la vallée.
  Des jours, des nuits, le temps a fui.
  Voici qu'en la nuit étoilée,
  Un cœur s'endort, Jean-François est mort,
  Car toute chair est comme l'herbe,
  Elle est comme la fleur des champs.
  Epis, fruits mûrs, bouquets et gerbes,
  Hélas! vont en se desséchant...

  Une cloche sonne, sonne,
  Elle chante dans le vent.
  Obsédante et monotone,
  Elle redit aux vivants:
  "Ne tremblez pas, cœurs fidèles,
  Dieu vous fera signe un jour.
  Vous trouverez sous son aile
  Avec la vie éternelle
  L'éternité de l'amour."


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