迷子になった女の子(ブレイク詩集:経験の歌)

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ウィリアム・ブレイクの詩集「経験の歌」 Songs of Experience から「迷子になった女の子」 The Little Girl Lost を読む。(壺齋散人訳)


迷子になった女の子

  未来へ向かって
  私は予見の夢を見る
  大地が眠りから覚め
  (死の如き深い眠りから覚め)

  立ち上がって生気に満ち
  創造主に訴えかけると
  荒れ果てた砂漠はよみがえり
  麗しい楽園に変わるだろう

  南の国にあっては
  夏の盛りは衰えを知らぬ
  その楽園に一人の少女
  愛らしいリカが横たわっている

  七つの夏が過ぎていったと
  愛らしいリカはいう
  野鳥の声を耳にしながら
  果てもなくさまよううちに

  “甘い眠りを眠りたい
  この木の下に横たわって
  父さん 母さん 泣いて頂戴
  あなたのリカが眠るところで“

  “砂漠の中に一人ぼっち
  あなたたちの小さな子ども
  リカは安心して眠れない
  母さんが泣いてくれなければ“

  “母さんの心が痛んだら
  リカは起き上がるでしょう
  母さんが寝たままだったら
  リカは決して泣かないでしょう“

  “夜はとてもこわいけれど
  砂漠は明るく照らされている
  私がこうして寝ているあいだに
  月が昇って照らすから“

  リカは眠りながら横たわる
  すると恐ろしい肉食獣が
  深い谷間から這い上がってきて
  眠れる少女を覗き込む

  王様らしいライオンが
  少女の顔をのぞきまわると
  少女の周りを飛び跳ねる
  神聖な大地の上を

  ヒョウやトラたちもやってきて
  少女の周りを飛び跳ねる
  すると年老いたライオンが
  黄金のタテガミを少女に垂れ

  少女の胸をなめてやったり
  少女の首をなめたりする
  燃えるようなライオンの目には
  ルビーのような涙がこぼれた

  女王様のライオンは
  少女の小さな着物を脱がし
  自分たちが住む洞窟へと
  眠れる少女を運んでいった

「迷子になった女の子」は、もともと1789年刊行の「無垢の歌」の中に収められていたが、1894年「無垢の歌・経験の歌」として合本の形で出版された際に、「経験の歌」の一部分として掲載しなおされた。内容はまったく変わっていない。

ブレイクがこれを「経験の歌」のほうに移したのは、内容が少女の試練を描いており、人間の経験の歌に分類したほうが相応しいと思ったからだろう。


The Little Girl Lost William Blake

  In futurity
  I prophetic see,
  That the earth from sleep,
  (Grave the sentence deep)

  Shall arise and seek
  For her maker meek:
  And the desart wild
  Become a garden mild.

  In the southern clime,
  Where the summers prime,
  Never fades away;
  Lovely Lyca lay.

  Seven summers old
  Lovely Lyca told.
  She had wanderd long.
  Hearing wild birds song.

  Sweet sleep come to me
  Underneath this tree;
  Do father, mother weep.
  Where can Lyca sleep.

  Lost in desart wild
  Is your little child.
  How can Lyca sleep,
  If her mother weep.

  If her heart does ake,
  Then let Lyca wake;
  If my mother sleep,
  Lyca shall not weep.

  Frowning frowning night,
  O'er this desart bright,
  Let thy moon arise,
  While I close my eyes.

  Sleeping Lyca lay;
  While the beasts of prey,
  Come from caverns deep,
  View'd the maid asleep

  The kingly lion stood
  And the virgin view'd,
  Then he gambold round
  O'er the hallowd ground;

  Leopards, tygers play,
  Round her as she lay;
  While the lion old,
  Bow'd his mane of gold.

  And her bosom lick,
  And upon her neck,
  From his eyes of Bame,
  Ruby tears there came;

  While the lioness,
  Loos'd her slender dress.
  And naked they convey'd
  To caves the sleeping maid


関連リンク: 英詩のリズムブレイク詩集「経験の歌」

  • ブレイク詩集「無垢の歌」 Songs of Experience





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