煙突掃除の男の子(ブレイク詩集:経験の歌)

| コメント(1) | トラックバック(0)

ウィリアム・ブレイクの詩集「経験の歌」 Songs of Experience から「煙突掃除の男の子」 The Chimney Sweeper の歌を読む。(壺齋散人訳)


煙突掃除の男の子

  真っ白な雪の中に 小さな黒い生き物が
  悲しそうに泣き叫んでいる
  父さん母さんはどこ いってごらん
  父さん母さんは教会に お祈りにいったのさ

  ぼくがヒースの上でも楽しそうに遊び
  雪の中でも笑ってられるので
  父さん母さんは僕に死装束を着せ
  悲しみの歌を歌うよう教えたのさ

  それでも僕が楽しく歌い踊るのを見て
  父さん母さんは安心したってわけなのさ
  それで神様や牧師様や王様をたたえ
  ぼくのためには惨めな天国をくれたのさ

この詩は隠喩で満ちていて、非常に難解な作品だ。「無垢の歌」に収められた同名の詩は、辛い仕事の合間に、天使たちに導かれて遊び戯れる子どもらが描かれ、どこか救いを感じさせたのだが、この作品にはそのような救いが見られない。

小さな黒い生き物が「煙突掃除の男の子」であることは疑いがない。問題はその先だ、両親に死装束を着せられたとは、どんな意味なのだろうか。筆者はこの歌が、もしかしたら死んだ男の子を描いたのだと、思わずにはいられない。

そう解釈すると、なんとなくすっきりとする。両親は死んだわが子の冥福を祈るために教会にいくが、子供に用意された天国は、この世以上によいものだとは思えない、そう煙突掃除の男の子は嘆くのだ。


The Chimney Sweeper William Blake

  A little black thing among the snow:
  Crying weep, weep, in notes of woe!
  Where are thy father & mother! say!
  They are both gone up to the church to pray.

  Because I was happy upon the heath,
  And smil'd among the winters snow:
  They clothed me in the clothes of death,
  And taught me to sing the notes of woe.

  And because I am happy, & dance & sing,
  They think they have done me no injury:
  And are gone to praise God & his Priest & King
  Who make up a heaven of our misery.


関連リンク: 英詩のリズムブレイク詩集「経験の歌」

  • ブレイク詩集「無垢の歌」 Songs of Experience





  • ≪ 見つかった女の子(ブレイク詩集:経験の歌) | 英詩のリズム | 子守の歌(ブレイク詩集:経験の歌) ≫

    トラックバック(0)

    トラックバックURL: http://blog.hix05.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/416

    コメント(1)

    What is the captcha code? Please provide me captcha code codes or plugin. Thanks in advance.

    コメントする



    アーカイブ

    Powered by Movable Type 4.24-ja

    本日
    昨日

    最近のコメント

    この記事について

    このページは、が2007年10月 7日 18:23に書いたブログ記事です。

    ひとつ前のブログ記事は「見つかった女の子(ブレイク詩集:経験の歌)」です。

    次のブログ記事は「自祭文:陶淵明自らを祭る」です。

    最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。