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ヨーガ:心身の調和


ヨーガが静かなブームを引き起こしている。もともと年配の人を中心に行われていたが、最近は若い人にも人気があるという。心身のバランスを追及する人から、フィットネス気分で行う人々まで、幅広い層に浸透しつつあるようだ。

ヨーガは一時期、オウム真理教のイメージと結びついたこともあり、日本では下火になったことがあった。だが座禅に親しんできた日本人にとっては、それと親縁の関係にあるヨーガは、心身のバランスを保つ方法として、根強い信奉者を持ち続けてきた。

世紀の変り目頃からは、欧米でも普及するようになった。そんな影響もあるのか、いまやヨーガは世界中のあちこちで行われるようになり、発祥の国インドにおいても、新たなブームが起こっているという。

そのヨーガとは、いったいどんなものなのか。手足を複雑に組み合わせたり、奇妙な格好で逆立ちしたりすることもあるので、一見の人には、身体の鍛錬法の一種と写るようである。そんなことから、アメリカなどでは、ソフィスティケートされたフィットネスとして、ヨーガを受け入れる人が多いと聞く。

だがヨーガはもともと、心に重点を置いた修行なのである。発祥地のインドでは3000年の歴史を有し、その過程でさまざまな流派が生まれたが、そのいづれにも共通するのは、心の開放と、それに向けた心身の調和というものであった。人の心は肉体という形に包まれているので、その両者を調和させることによって、心を望ましい状態に保とうというのである。

ヒンドゥーの経典「ヴァガバッド・ギーター」は、ヨーガを定義して、「苦しみからの解放」としている。「風のないところに置いた灯火が揺らぐことがないように、心をしっかりとコントロールする」それがヨーガの目的である。この境地を得るためには、心と身体を望ましい形に結び付けなければならない。

そもそも「ヨーガ」という言葉は、サンスクリット語で「結びつける」という意味なのだそうだ。心と身体を結び付けているものは呼吸である。したがってヨーガの実践は呼吸に重点を置く。一つ一つのポーズは、すべて呼吸のリズムにしたがって、ゆったりと行われる。

日本にハタ・ヨーガを普及させた佐保田鶴治は、ヨーガは心身の健康法であるとし、体操、呼吸法、瞑想からなるといった。しかしてヨーガの究極の目的は心の平静にあり、行き着くところは瞑想なのだとした。瞑想をするためには呼吸が整っていなければならず、正しい呼吸をするためには身体が整っていなければならない。ヨーガはこれらすべてを包み込んだ実践なのであり、アーサナと呼ばれるヨーガ特有の体位は、呼吸を整えるための手段なのだといった。

ヨーガの体操は、長い歴史的な実践に支えられて、実に合理的にできている。それは手足をはじめ身体中の関節を柔軟にし、また姿勢をしゃきっとさせる効果をもつ。そんなところが究極のフィットネスとして受け入れられる理由ともなっている。だがフィットネスと異なるところは、ヨーガの目的は平静であって運動ではないことだ。運動が目的なら、ヨーガをするより、歩いたり走ったりしたほうがよい。

筆者も10数年前、さる人の手ほどきを受けてヨーガのポーズをためしたことがあった。最初は硬直した身体に大変な負荷を感じることもあったが、辛抱強くやっているうちに、姿勢はよくなるし、身体が軽くなっていくような感じを覚えたものだ。

だがヨーガのポーズは、自己流で行うと思わぬ怪我につながることもある。なにしろ身体を複雑に曲げ伸ばしするのであるから、いきなり無理な姿勢をとると、耐えられない場合が多いのである。熟練した人について、堅実に行っていくことが必要だ。

一度にかける時間は、そんなに長い必要はないが、毎日着実に行うことだ。長い間持続的に実践していれば、老いて猶若々しい身体を保ち、また心の平静をも実現できるだろう。


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