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飛翔 Élévation(ボードレール:悪の華)


シャルル・ボードレールの詩集「悪の華」 Les Fleurs du Malから「飛翔」 Élévation(壺齋散人訳)


飛翔

  沼を越え 谷を超え
  山々 森 雲 海を越えて
  太陽を横切り 天空を横切り
  はたまた星の彼方をも横切り

  我が心よ 汝は生き生きと動き回る
  勝ち誇った波乗りのように
  えもいわれぬ喜びを以て
  無限の深淵をはぐくむ汝よ

  この世の汚濁から逃れ去り
  清浄の大気に身を清めよ
  ネクタルのごとき清らかな火を飲め
  かの天空を満たす聖なる酒を

  我らを霧のように包み込む
  倦怠 大いなる嘆きを後に
  さわやかな飛翔の羽をはばたかせ
  光明に向かって飛び立つものは幸いなり

  思いはひばりの如く軽やかに
  夜明けの空を飛び回るものは幸いなり
  人生を超越しつつ飛び回り
  物言わぬ花々の言葉を解するものは幸いなり

鳥の飛翔に精神の自由と高揚を重ね合わせてイメージするのは、ロマン派特にドイツの詩人たちに特徴的なことだった。ボードレールはホフマンの詩を愛読しており、この詩もホフマンにインスピレーションを得て書いたもののようである。

また、ボードレールはリヒャルト・ワグナーへの手紙の中で、己の精神が「空高く駆け上り、海中を遊泳する」ことについて言及している。そしてその気分をワグナーの曲の精神性と関連付けてもいる。

「この世の汚濁から逃れ去り」、「ひばりの如く軽やかに」、人生を超越して飛び回ることに、ボードレールは詩人としての至高のあり方を見出したのだと思われる。


Élévation -Charles Baudelaire

  Au-dessus des étangs, au-dessus des vallées,
  Des montagnes, des bois, des nuages, des mers,
  Par delà le soleil, par delà les éthers,
  Par delà les confins des sphères étoilées,

  Mon esprit, tu te meus avec agilité,
  Et, comme un bon nageur qui se pâme dans l'onde,
  Tu sillonnes gaiement l'immensité profonde
  Avec une indicible et mâle volupté.

  Envole-toi bien loin de ces miasmes morbides;
  Va te purifier dans l'air supérieur,
  Et bois, comme une pure et divine liqueur,
  Le feu clair qui remplit les espaces limpides.

  Derrière les ennuis et les vastes chagrins
  Qui chargent de leur poids l'existence brumeuse,
  Heureux celui qui peut d'une aile vigoureuse
  S'élancer vers les champs lumineux et sereins;

  Celui dont les pensers, comme des alouettes,
  Vers les cieux le matin prennent un libre essor,
  — Qui plane sur la vie, et comprend sans effort
  Le langage des fleurs et des choses muettes!


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