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前世 La Vie antérieure (ボードレール:悪の華)


ボードレールの詩集「悪の華」 Les Fleurs du Mal から「前世」 La Vie antérieure を読む。(壺齋散人訳)


前世

  余は長らく大いなる柱廊のもとに暮らしていた
  海上の太陽が千々の色合いに染め上げ
  厳かに聳え立つ列柱は
  夕べの影を落とし 洞窟の如くにみえた

  波は空を映して渦巻き
  厳粛と神秘のうちに 打ち寄せる音は
  豊かな音楽となって 夕日と溶け合い
  我が瞳のうちに反射しあった

  かの静寂な逸楽のうちに 余は暮らした
  青い海 高巻く波 光に包まれ
  よき香を放つ裸の召使にかしずかれつつ

  召使らは椰子の葉で余の額を飾り
  余が追い求める苦き秘密の
  如何ばかりに深いかを測り続けた

前世と題したこの詩は、ボードレールが若い頃に経験した南洋での思い出を振り返ったのだとされている。ボードレールは義父オーピック将軍によって、修行のためにとインド行きの船に乗せられたのだが、途中でフランスが恋しくなって舞い戻ってきた。だから南洋の思い出は、ボードレールにとっては、甘さと辛さを併せ持っていた。

この詩の中では、前世の思い出は、荘厳さに満ちている。ボードレールは土人の女たちにかしずかれ、ハーレムに君臨する王のような自分を夢見ている。


La Vie antérieure — Charles Baudelaire

  J'ai longtemps habité sous de vastes portiques
  Que les soleils marins teignaient de mille feux,
  Et que leurs grands piliers, droits et majestueux,
  Rendaient pareils, le soir, aux grottes basaltiques.

  Les houles, en roulant les images des cieux,
  Mêlaient d'une façon solennelle et mystique
  Les tout-puissants accords de leur riche musique
  Aux couleurs du couchant reflété par mes yeux.

  C'est là que j'ai vécu dans les voluptés calmes,
  Au milieu de l'azur, des vagues, des splendeurs
  Et des esclaves nus, tout imprégnés d'odeurs,

  Qui me rafraîchissaient le front avec des palmes,
  Et dont l'unique soin était d'approfondir
  Le secret douloureux qui me faisait languir.


関連リンク: 詩人の魂ボードレール >>悪の華

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