美の女神 La Beauté 悪の華

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ボードレール詩集「悪の華」 Les Fleurs du Mal から「美の女神」 La Beautéを読む。(壺齋散人訳)


美の女神

  わたしは美だ 石でつむがれた夢だ
  わたしの胸に 死すべき者たちはみなつまずく
  わたしは詩人らに愛をもたらすためにある
  永遠で 物質の如く物言わぬ愛だ

  わたしはスフィンクスのように青空に君臨する
  わたしは雪の如き心臓を持ち 白鳥のように白い
  わたしは線をゆがめる運動を憎む
  わたしは決して泣くことなく 笑うこともない

  古の巨大な遺跡に似せて形作った
  わたしの偉大な像を前にして
  詩人らは生涯をかけて研鑽せねばならぬ

  従順な恋人たちを魅了するように
  わたしはすべてのものが美しく写る鏡を持つ
  永遠の輝きに満ちた二つの大きな眼だ

「美の女神」と題するこの詩は、1840年代なかばの比較的若い頃に書かれたものとされている。当時の芸術家の間ではルーヴルにあった「ミロのヴィーナス」が話題になっており、ボードレールもそれに触発されたのではないかとする見解もあるが、確かなことはわからない。

一方、エドガー・ポーの短編小説「リジーア」との関連が指摘されている。


La Beauté — Charles Baudelaire

  Je suis belle, ô mortels! comme un rêve de pierre,
  Et mon sein, où chacun s'est meurtri tour à tour,
  Est fait pour inspirer au poète un amour
  Eternel et muet ainsi que la matière.

  Je trône dans l'azur comme un sphinx incompris;
  J'unis un coeur de neige à la blancheur des cygnes;
  Je hais le mouvement qui déplace les lignes,
  Et jamais je ne pleure et jamais je ne ris.

  Les poètes, devant mes grandes attitudes,
  Que j'ai l'air d'emprunter aux plus fiers monuments,
  Consumeront leurs jours en d'austères études;

  Car j'ai, pour fasciner ces dociles amants,
  De purs miroirs qui font toutes choses plus belles:
  Mes yeux, mes larges yeux aux clartés éternelles!


関連リンク: 詩人の魂ボードレール >>悪の華

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