1819年のイングランド ENGLAND IN 1819:シェリー

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パーシー・B・シェリーのソネット「1819年のイングランド」ENGLAND IN 1819 を読む。(壺齋散人訳)


1819年のイングランド

  年老いて狂気にかられ嘲られつつ死にゆく王
  貴族と称しながらくずのような連中は
  人民の軽蔑を浴びて泥のように生きている 
  こいつらは何も見えず何も感ぜず何も知らない

  あわれな国土にヒルのように食らいつき
  すすった血の重みで剥がれ落ちるまで離れない
  人民は不毛の大地に飢えて絶望するのみだ
  軍隊は諸刃の剣がそうあるように

  解放者ともなれば抑圧者ともなる
  法も公明正大といいながら人を不幸にするばかり
  宗教はキリスト不在 聖書はただの紙くず同然

  元老院は役たたず 古代の遺物のようなもの
  みんな墓場に行くがよい そうすれば
  幽霊がこの世の中を明るくしてくれるだろう

「1819年のイングランド」と題したこのソネットは、1819年の「マンチェスターの虐殺」に触発されてかかれ、たたちに労働者への連帯を表明するものとして発表された。

シェリーの強烈な体制批判が表れたものだ。シェリーのこのような問題意識は、後に続く多くの思想家たちに影響を与えたが、同時代の治世者たちには危険思想の持ち主と受け取られ、迫害される原因ともなった。

詩の中で言及されている王はジョージ3世。この王の下で貴族らの支配階級は人民を抑圧し、ヒルのように人民の血を吸いながら生きている。一方人民は抑圧されて、飢えるのみだ。シェリーにはこうした社会のあり方が我慢ならなかった。

最後の二連は、開放の可能性をほのめかした部分。だが解放者は幽霊とされるのみで、明確な形を持っていない。その辺がシェリーの開放思想の未熟なところだ。


ENGLAND IN 1819

  An old, mad, blind, despised, and dying king,--
  Princes, the dregs of their dull race, who flow
  Through public scorn, mud from a muddy spring,--
  Rulers who neither see, nor feel, nor know,

  But leech-like to their fainting country cling,
  Till they drop, blind in blood, without a blow,--
  A people starved and stabbed in the untilled field,--
  An army which liberticide and prey

  Makes as a two-edged sword to all who wield,--
  Golden and sanguine laws which tempt and slay;
  Religion Christless, Godless, a book sealed,--

  A Senate--Time's worst statute unrepealed,--
  Are graves from which a glorious Phantom may
  Burst to illumine our tempestuous day.


関連リンク: 英詩のリズムパーシー・B・シェリー

  • ウィリアム・ワーズワース

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