ボードレール詩集「悪の華」 Les Fleurs du Mal から「墓」 Sépulture を読む。(壺齋散人訳)
墓
暗くて重苦しい夜に
善良なクリスチャンが慈悲の心から
汝の遺体を廃墟の裏の
土に埋めてくれたとしたら
清浄な光を放つ星々が
かすかに消え入りそうになる頃あい
夜な夜な蜘蛛は糸をつむぎ
マムシは子を抱きかかえるだろう
埋められた汝は頭の上に
一年中聞くことになるだろう
狼たちの悲痛な叫びを
痩せこけた魔女の叫びを
スケベ野郎どもの浮かれ騒ぎを
盗賊たちのたくらみの声を
自分の死後のことについてボードレールが抱いていた感情には複雑なものがあった。ボードレールにとって、死後の世界とは現在の裏側の世界、鏡の奥にあるもう一つの現在であった。必ずしも不確定な未来なのではなかったのだ。
この詩においても墓場の中は、キリスト教的な死とは全く異なったイメージが展開されている。断罪とか救済とか最後の審判とか、あるいは魂の救済とか地獄の責め苦とか、そんなことはボードレールにとっては意味を持たなかった。
自分が死んだからといって、世界にとって特別なことが起こるわけではない、自分と世界との関係は、死んでしまった後でもなんら変わることはないのだ、そうボードールは歌っているのである。
Sépulture - Charles Baudelaire
Si par une nuit lourde et sombre
Un bon chrétien, par charité,
Derrière quelque vieux décombre
Enterre votre corps vanté,
À l'heure où les chastes étoiles
Ferment leurs yeux appesantis,
L'araignée y fera ses toiles,
Et la vipère ses petits;
Vous entendrez toute l'année
Sur votre tête condamnée
Les cris lamentables des loups
Et des sorcières faméliques,
Les ébats des vieillards lubriques
Et les complots des noirs filous.