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幻想的な版画 Une gravure fantastique:ボードレール


ボードレール詩集「悪の華」 Les Fleurs du Mal から「幻想的な版画」 Une gravure fantastique を読む。(壺齋散人訳)


幻想的な版画

  この奇妙な怪物が身にまとうものといえば
  骸骨の頭上にグロテスクに載った
  モックキングのおぞましき王冠のみだ
  拍車も着けず 鞭もふるわず 馬を走らす

  黙示録に出てくるような赤毛の怪物は
  癲癇病みのようなよだれを鼻からたらし
  主人ともども空間を駆け抜けて前進する
  足元の神を踏みつけにしながら

  騎士は燃えさかる剣を振りかざし
  馬を走らせ群集を蹴散らし
  尊大な皇子のように進んでいく

  巨大な墓場が冷え冷えと果てしなく広がる
  そこには青白く生気のない陽光につつまれ
  古代人や現代人どもが横たわっている

この詩は、モーチマーの原作をもとにしたヘインズの版画「馬上の死神」に触発されて書いたものだ。1784年に出版されている。

版画そのものは、死をテーマにしている。だが単に死のおぞましさを表現するだけでなく、それを生との対比で描いていることは、死神がカーニバルの王冠をかぶっていることに表されている。

ボードレールはそこに詩情を感じたのであろう。

Une gravure fantastique - Charles Baudelaire

  Ce spectre singulier n'a pour toute toilette,
  Grotesquement campé sur son front de squelette,
  Qu'un diadème affreux sentant le carnaval.
  Sans éperons, sans fouet, il essouffle un cheval,

  Fantôme comme lui, rosse apocalyptique,
  Qui bave des naseaux comme un épileptique.
  Au travers de l'espace ils s'enfoncent tous deux,
  Et foulent l'infini d'un sabot hasardeux.

  Le cavalier promène un sabre qui flamboie
  Sur les foules sans nom que sa monture broie,
  Et parcourt, comme un prince inspectant sa maison,

  Le cimetière immense et froid, sans horizon,
  Où gisent, aux lueurs d'un soleil blanc et terne,
  Les peuples de l'histoire ancienne et moderne.


関連リンク: 詩人の魂ボードレール >>悪の華

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