配偶者はイライラの種?熟年離婚をしないために

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先稿「いつまでも恋人同士でいられるために」の中で、人は努力によっては、配偶者との間でいつまでも新鮮な恋愛感情を持続させることができるということを書いた。そうした努力なしでは、愛情は次第に摩滅して、互いの関係は味気ないものに変わっていく。

夫婦というものは、長い間一緒に暮らしていると、相手の存在が当たり前のものになり、空気のようなものとして感じられてくる。それはある意味で仕方のないことだが、しかし、時に相手をうるさく感じたり、相手の言動にイライラするようだと、見逃しえない問題かもしれない。

行動学者の研究によれば、夫婦の関係は長くなればなるほど遠慮のないものとなり、その結果、相手に対して配慮に欠けた言動をとったり、過大な要求をしがちになるという。世の中にはこうしたことが原因で離婚するカップルも増えているそうだ。熟年離婚といわれるものは、多くの場合「性格の不一致」などと説明されているが、要するに相手を気遣う努力にかけた人と、相手を許す度量に足りない人が一緒にいると、そんな破局につながるのだろう。

夫婦関係におけるこうしたネガティヴな要素はしかし、一概に排斥されるべきものでもない。夫婦がともに年をとって、親密になればなるほど、互いの存在が快適になり、その裏返しとしてずけずけと物をいったり、身勝手な要求をするようにもなるのだ。これはある意味で、夫婦間のノーマルな要素といえる。こうしたリラックスできる関係があるからこそ、夫婦関係は長続きするのである。だから大事なことは、適度に甘えあいながら、そこに越えてはならない一線があることをよくわきまえておくことだ。

ここにアメリカの行動学者カイラ・バーディットによる面白い研究がある。特定の人たちを対象に、彼らの配偶者、子ども、友人に対する評価が、時間の流れの中でどのように変化していくかを追及したものだ。

この三者の中で、誰に一番イライラさせられるかを尋ねたところ、配偶者と答えた人がもっとも多かった。一番少ないのは友人である。友人は選択が可能であり、イライラする人とは別に付き合わなければよいのであるから、当然の結果というべきだろう。また、子どもは成長するにつれて親から自立し、ねだったりして親を困らせることが少なくなる。

これに対して配偶者をイライラする存在と感ずる人は、馬鹿にならない数字に上る。とりわけ、若い頃から相手にイライラを感じたことのある人は、年をとるにつれてその傾向が強くなる。それにしたがって、夫婦が対立し、顔を背けあう機会も増える。

バーディットはこの数字を前にして、夫婦がコンフリクトを上手に回避する必要性を説いている。配偶者というものは、友人や子どもと異なり、生きている限り常に一緒にいなければならない存在だ。だから相手の人格を鷹揚に受け止め、つまらぬことに目くじらを立てたりしないことだ。長い間培ってきた処世術を、夫婦関係の中でも上手につかいわけること、これが夫婦円満の秘訣であると、バーディットは強調している。


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