召南とは、周南の項で記したとおり、周の領土の南部のうち、召公が分け持った土地を指す。今そこがどのあたりにあたるのかについては、諸説ある。黄河の南であろうとすることから、楚の地に当たるところではないかとする説もあるが、真相はわからない。いづれにしても、周の領土の一部であるから、そこから生まれた歌謡群は、周南に収められたものと共通するところが多い。
召南篇には十四篇が収められている。冒頭は「鵲巣」(カササギの巣)と題するものである。
鵲巣(壺齋散人注)
維鵲有巢 維れ鵲に巢有り
維鳩居之 維れ鳩 之に居る
之子于歸 之の子于(ここ)に歸(とつ)ぐ
百兩御之 百兩もて之を御(むか)ふ
維鵲有巢 維れ鵲に巢有り
維鳩方之 維れ鳩 之を方(たも)つ
之子于歸 之の子于に歸ぐ
百兩將之 百兩もて之を將(おく)る
維鵲有巢 維れ鵲に巢有り
維鳩盈之 維れ鳩 之に盈(み)つ
之子于歸 之の子于に歸ぐ
百兩成之 百兩もて之を成せり
ここにカササギの作った巣がある、鳩がそこに住んでいる、その鳩のようにこの子がよそさまに嫁ぐことになった、百両の車を以て迎えにきた
ここにカササギの作った巣がある、鳩がそれを守っている、その鳩のようにこの子がよそさまに嫁ぐことになった、百両の車を以て送り出そう
ここにカササギの作った巣がある、鳩がそれに満ちている、その鳩のようにこの子がよそさまにとつぐことになった、百両の車を以て婚儀をなそう
カササギの巣には、鳩が居候をして、巣を守り子を作ったりしている。それは、婚家とそこに嫁いだ嫁のような関係にも喩えられる。この詩は、カササギと鳩の関係になぞらえながら、よそ様の家に嫁いでいく娘のことを歌ったものであろう。
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