詩経国風:召南篇から「殷其雷」を読む。(壺齋散人注)
殷其雷 殷たる其の雷
在南山之陽 南山の陽(みなみ)に在り
何斯違斯 何ぞ斯れ斯(ここ)を違(さ)って
莫敢或遑 敢(あ)へて遑(いとま)或ること莫きや
振振君子 振振たる君子
歸哉歸哉 歸らん哉 歸らん哉
殷其雷 殷たる其の雷
在南山之側 南山の側に在り
何斯違斯 何ぞ斯れ斯を違って
莫敢遑息 敢へて遑息すること莫きや
振振君子 振振たる君子
歸哉歸哉 歸らん哉 歸らん哉
殷其雷 殷たる其の雷
在南山之下 南山の下に在り
何斯違斯 何ぞ斯れ斯を違って
莫敢遑處 敢へて遑處すること莫きや
振振君子 振振たる君子
歸哉歸哉 歸らん哉 歸らん哉
殷々と響き渡る雷鳴は、南山の南から聞こえてきます、何故夫はわたしのもとを去って、かくも行役に暇がないのでしょう、情け深いあなた、早く戻ってきてください
殷々と響き渡る雷鳴は、南山の傍らから聞こえてきます、何故夫はわたしのもとを去って、かくも息つく暇がないのでしょう、情け深いあなた、早く戻ってきてください
殷々と響き渡る雷鳴は、南山のふもとから聞こえてきます、何故夫はわたしのもとを去って、かくも休む余裕がないのでしょう、情け深いあなた、早く戻ってきてください
行役に駆りだされてなかなか戻ってこない夫を待ちわびる妻の気持ちを歌ったものだろう、
殷とは雷がごろごろと鳴り響くさま、雷は夏に鳴る、その夏になってもまだ戻ってこない夫を妻は首を長くして待っている、この時代為政者は人民を戦いに駆り出しても、夏になると収穫を考えて家に帰したものだった、この詩はそうした事情を踏まえている
南山は夫が向かった方角をいったものだろうか、振振は毛伝に信義が厚いとある
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