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ヴァガボンド Vagabonds :ランボー「イリュミナション」


ランボーの「イリュミナション」から、ヴァガボンド Vagabonds (壺齋散人訳)

  憐れな兄貴よ!こいつのおかげでどれほど眠れぬ夜を過ごしたことか!
  「俺は人生にまじめに取り組んでこなかった。
  俺は人生を甘く見ていた。
  こんなことをしていたら人生から追放され、奴隷の境遇に陥ってしまう。」
  兄貴は俺を運がない奴だといい、異常なほど純真だという。
  そういってあやしい理屈を付け加えるのだ。

  俺はこの悪魔のような御仁にせせら笑いを返すと、
  最後は窓際に行くのだった。
  そして劇団が横切っていく草原を眺めながら
  やがて見るだろう夜毎の夢のことを考えるのだった。

  こんなささやかな気晴らしの後、
  俺はわら布団の上に横になった。
  すると殆ど毎夜のように、眠りにつく間もなく兄貴は起き上がった。
  口からはよだれをたらし、目をギョロギョロとさせ、夢から覚めたように!
  そして俺を居間の方へ引っ張っていって、馬鹿げた夢の話をするのだった。

  実際俺は、兄貴を太陽の原始の子に相応しい状態に戻してやろうと、
  真剣に考えていた。
  こうして俺たちは、酒場でワインを煽り、道々ビスケットを頬ばり、
  その上俺ときては色んなことを考えながら、さまよい歩いたのだった。


ヴァガボンドと題するこの詩は、ランボーとヴェルレーヌのそれこそヴァガボンドというに相応しい共同生活を振り返ったものだ。二人はロンドンにおける破局を迎えるまで、パリ、ベルギー、ロンドンと居場所を変えながら、放浪の旅を続けた。その旅がどのようなものであったか、この詩がその一面を伝えている。

二人の間では、ヴェルレーヌは年齢的には兄貴分だったが、精神年齢の上では、まだ十代の少年に過ぎなかったランボーのほうが上だった。


Vagabonds

   Pitoyable frère! Que d'atroces veillées je lui dus!
  "Je ne me saisissais pas fervemment de cette entreprise.
  Je m'étais joué de son infirmité.
  Par ma faute nous retournerions en exil, en esclavage."
  Il me supposait un guignon et une innocence très bizarres,
  et il en ajoutait des raisons inquiétantes.

  Je répondais en ricanant à ce satanique docteur,
  et finissais par gagner la fenêtre.
  Je créais, par delà la campagne traversée par des bandes de musique rare,
  les fantômes du futur luxe nocturne.

   Après cette distraction vaguement hygiénique,
  je m'étendais sur une paillasse.
   Et, presque chaque nuit, aussitôt endormi, le pauvre frère se levait,
  la bouche pourrie, les yeux arrachés, - tel qu'il se rêvait!
  - et me tirait dans la salle en hurlant son songe de chagrin idiot.

   J'avais en effet, en toute sincérité d'esprit,
  pris l'engagement de le rendre à son état primitif de fils du Soleil,
  -et nous errions, nourris du vin des Cavernes et du biscuit de la route,
  moi pressé de trouver le lieu et la formule.


関連リンク: 詩人の魂ランボー「イリュミナション」 Illuminations

  • アルチュール・ランボー初期の詩

  • ポール・ヴェルレーヌ

  • ステファヌ・マラルメ Stéphane Mallarmé

  • ボードレール Charles Baudelaire

  • ポール・ヴァレリー Paul Valéry
  • レミ・ド・グールモン

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