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日月:見捨てられた妻の嘆き(詩経国風:邶風)


詩経国風:邶風篇から「日月」を読む。(壺齋散人注)

  日居月諸   日や月や
  照臨下土   下土を照臨す
  乃如之人兮  乃ちかくの如き人
  逝不古處   逝(ここ)に古處せず
  胡能有定   胡(なん)ぞ能く定まることあらんや
  寧不我顧   寧(なん)ぞ我を顧りみざるや

  日居月諸   日や月や
  下土是冒   下土を是れ冒ふ
  乃如之人兮  乃ちかくの如き人
  逝不相好   逝いて相ひ好みせず
  胡能有定   胡ぞ能く定まることあらんや
  寧不我報   寧ぞ我に報ひざるや

  日居月諸   日や月や
  出自東方   出づること東方よりす
  乃如之人兮  乃ちかくの如き人
  德音無良   德音良きこと無し
  胡能有定   胡ぞ能く定まることあらんや
  俾也可忘   俾(また)忘る可からしめんや

  日居月諸   日や月や
  東方自出   東方より出づ
  父兮母兮   父や母や
  畜我不卒   我を畜ひて卒へず
  胡能有定   胡ぞ能く定まることあらんや
  報我不述   我に報ゆること述(したが)はず

日も月も常にこの下界を照らし続けます、それなのにあの人はわたしのもとにいようとしない、どうしたらわたしのもとにとどまってくれるのでしょう、何故わたしをひとりに捨てておくのでしょう

日も月も常にこの下界を覆っています、それなのにあの人はわたしを顧みようともしない、どうしたらわたしのもとにとどまってくれるのでしょう、何故わたしを思いやってくれないのでしょう

日も月も常に東から出てきます、それなのにあの人はいなくなったまま帰ってこようともしない、どうしたらわたしのもとにとどまってくれるのでしょう、どうしたらわたしを忘れないでくれるのでしょう

日も月も常に東から現れます、わたしの父母はこんなわたしのことをいまだに心配しています、どうしたらあの人はわたしのもとにとどまってくれるのでしょう、何故わたしを可愛がってくれないのでしょう


夫に見捨てられた妻の嘆きを歌ったものだ。日も月も一日たりとも忘れずにこの世界を照らし続けるのに、わたしの夫は妻を照らし思いやる気持ちを忘れて、どこかへいなくなったまま帰ってこようとしない、どうしたらそんな夫を呼び戻し、夫婦の契りを結んだままでいられるのか、

そんな女の切ない思いが伝わる歌である、古代中国の夫婦関係がどのようなものであったか、筆者はつまびらかにはしないが、父母のことを引き合いに出していることから、この女性は夫に捨てられた後、両親と同居していたのであろうか、あるいは日本の古代におけると同じように、夫が妻の家に通う風習があったのであろうか


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