詩経国風:鄘風篇から「柏舟」を読む。(壺齋散人注)
汎彼柏舟 汎たる彼の柏舟
在彼中河 彼の中河に在り
髧彼兩髦 髧(たん)たる彼の兩髦
實維我儀 實に維れ我が儀
之死矢靡它 死に之(いた)るまで矢(ちか)って它靡(な)し
母也天只 母や天や
不諒人只 人を諒とせず
汎彼柏舟 汎たる彼の柏舟
在彼河側 彼の河の側に在り
髧彼兩髦 髧たる彼の兩髦
實為我特 實に維れ我が特
之死矢靡慝 死に之るまで矢って它靡し
母也天只 母や天や
不諒人只 人を諒とせず
汎然と浮かぶ柏の船が、河の真ん中で漂っています、髧然と両側に垂れ下がったあの髪、あの人こそわたしの思い人でした、わたしはあの人に死ぬまで誠を尽くします、なのに母も天も、わたしの誠をわかってくれない
汎然と浮かぶ柏の船が、河の岸で漂っています、髧然と両側に垂れ下がったあの髪、あの人こそわたしの何より大切な人でした、わたしはあの人に死ぬまで誠を尽くします、なのに母も天も、わたしの誠をわかってくれない
死んだ許婚への変わらぬ愛を歌った歌である。河に浮かぶ船の姿に許婚の面影を感じ、そこから許婚への永遠の愛を誓う、母や天が自分をわかってくれなくとも、自分はもうほかの男に嫁ぐ気持ちはないのだと、訴えている