詩経国風:衛風篇から「有狐」を読む。(壺齋散人注)
有狐綏綏 狐有り綏綏(すいすい)たり
在彼淇梁 彼の淇の梁(はし)に在り
心之憂矣 心之(こ)れ憂ふ
之子無裳 かの子裳(もすそ)無からん
有狐綏綏 狐有綏綏たり
在彼淇厲 在彼の淇の厲(がけ)に在り
心之憂矣 心之れ憂ふ
之子無帶 かの子帶無からん
有狐綏綏 狐有り綏綏たり
在彼淇側 彼の淇の側に在り
心之憂矣 心之れ憂
之子無服 かの子服無からん
キツネが何かを求めて、淇水の梁を渡っていきます、それを見るとわたしの心は乱れて夫のことを思い出します、さぞや下着も破れたことでしょう
キツネが何かを求めて、淇水の崖を渡っていきます、それを見るとわたしの心は乱れて夫のことを思い出します、さぞや帯もちぎれたことでしょう
キツネが何かを求めて、淇水の傍らを渡っていきます、それを見るとわたしの心は乱れて夫のことを思い出します、さぞや服もぼろぼろになったことでしょう
行役に従う夫の安否を気遣った歌である。綏綏は何かを求めて前後左右に独りいくことをいう、キツネのその姿に夫の頼りない気持ちを読み取ったのであろう。之子は夫をさしていう言葉である。