女は何故男より長生きするか?

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昔から、女が男より長生きすることは、経験的に知られている。今日の先進諸国においては、女の平均寿命は男より5年から10年長い。100歳以上生きる人の圧倒的多数は女である。何故そうなのか。

ボストン大学教授で世界的な長寿研究の権威として知られるトム・パールス博士に、雑誌タイムがその理由を聞いた。なかなか参考になるので紹介したい。

死亡率を高める要因の最たるものは、心臓血管障害である。心臓病と脳卒中は癌と並んで、人の命を縮める最も大きな原因だ。ところが女性が心臓血管障害にかかる年齢は男性より遅い。男性が50-60代に発病することが多いのに対して、女性の場合には70-80代が中心である。これには女性ホルモンのエストロゲンが作用しているとの見方もあったが、今日では否定された。閉経後のエストロゲンの分泌は却って悪い影響のほうが強いのである。

一方心臓血管障害に体内の鉄分が関与していることがわかってきた。鉄分が細胞に取り込まれると有害な遊離基を形成し、それが細胞膜やDNAを破壊して、細胞や組織の老化を早めるらしいのである。女性はこの鉄分が男性に比較して不足しがちだ。周期的な生理によって大量の鉄を失うからだ。これが却って、細胞の老化を妨げているのではないかというわけである。

鉄分の不足は貧血などにつながり、決してよいことではないが、多すぎては細胞の老化をもたらすということらしい。ところで、鉄を多く含む食品の代表格は赤身の肉である。余り食いすぎると、若さ失うことになりかねないばかりか、心臓血管障害にかかる確率が高くなるというのは見過ごせない。

博士は、老化現象には遺伝子も関与していると考えている。遺伝子を構成している染色体の配列は女と男とでは異なっている。女はX-Xであるのに対して、男はX-Yである。この相違がどうも、老化と深い関係を持っているようなのだ。

病気や老化と関連する遺伝情報はX染色体のほうにより多く書かれている。女の場合には何らかの原因でX染色体に異変が現れると、もう片方のX染色体が代替の機能を果たすことがある。ところが男にはそれがないから、X染色体の異変(病気や老化につながる)はそのままストレートに身体の不調に結びつく、どうやらそういうことらしいのだ。(詳細なメカニズムはまだわかっていない)

しかし人の健康や老化は遺伝子のみによって左右されるわけではない。博士によれば、遺伝子が影響する割合は30パーセントであり、残りの70パーセントは環境によるものである。だから我々には、自分の健康や寿命をコントロールする十分な余地がある。

環境因子の中で最も大きなものは、喫煙、食生活、ストレスだと博士はいう。喫煙と偏った食生活の悪影響はいまさらいうまでもないだろう。ストレスについて言えば、男は女と比較して、ストレスの処理能力が劣っているらしい。その結果うつに陥って自殺するケースも女に比べれば格段に多い。ストレスはまた、心臓や血管に悪い影響を及ぼす。こういうわけで、ストレスのない生き方が長生きにつながると、博士はいうのである。

最後に、男の若死も男全体の平均寿命を引き下げる大きな要因のひとつだ。男は思春期から青年期にかけて「テストステロン・ストーム」と呼ばれるように、大量の男性ホルモンを分泌する。これが彼らを粗野な行動やら、暴飲暴食に駆り立て、命を縮めさせる原因となる。戦争に借り出されて若死するものの数も馬鹿にならない。

(参考)Why Do Women Live Longer Than Men? By Laura Blue : TIME


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    このページは、が2008年8月16日 19:36に書いたブログ記事です。

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