蒹葭(詩経国風:秦風)

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詩経国風:秦風篇から「蒹葭」を読む。(壺齋散人注)

  兼葭蒼蒼  兼葭蒼蒼たり
  白露為霜  白露霜と為る
  所謂伊人  所謂伊(こ)の人
  在水一方  水の一方に在り
  溯洄從之  溯洄して之に從はんとすれば
  道阻且長  道阻にして且つ長し
  溯游從之  溯游して之に從はんとすれば
  宛在水中央 宛として水の中央に在り

  兼葭萋萋  兼葭萋萋たり
  白露未晞  白露未だ晞(かは)かず
  所謂伊人  所謂伊の人
  在水之湄  水の湄(ほとり)に在り
  溯洄從之  溯洄して之に從はんとすれば 
  道阻且躋  道阻にして且つ躋(のぼ)る
  溯游從之  溯游して之に從はんとすれば
  宛在水中坻 宛として水の中坻に在り

  兼葭采采  兼葭采采たり
  白露未已  白露未だ已まず
  所謂伊人  所謂伊の人
  在水之涘  水の涘(ほとり)に在り
  溯洄從之  溯洄して之に從はんとすれば
  道阻且右  道阻にして且つ右す
  溯游從之  溯游して之に從はんとすれば
  宛在水中沚 宛として水の中沚に在り

葦が青々と茂り、白い露が霜になった、評判のこの人は、河の向こう側に住んでいる、河の流れに逆らって訪ねたいと思っても、水路は険しくかつ長い、河の流れに従って訪ねたいと思っても、なかなか行き着かず河の中ほどでうろうろするばかり

葦が盛んに茂り、白い露はまだ乾かないでいる、評判のこの人は、河のほとりに住んでいる、河の流れに逆らって訪ねたいと思っても、水路は険しくかつ落差がある、河の流れに従って訪ねたいと思っても、なかなか行き着かず河の中州でうろうろするばかり

葦が一面に茂り、白い露が降り止まない、評判のこの人は、河の向こう側のほとりに住んでいる、河の流れに逆らって訪ねたいと思っても、水路は険しくかつうねっている、河の流れに従って訪ねたいと思っても、なかなか行き着かず河の中ほどの小島でうろうろするばかり


河の向こう岸にすむ美しいと評判の娘を訪ねようとして果たせない男の、やるせない気持ちを歌ったものであろう。


兼葭は水辺に生える雑草、葦のことと思えば良い、所謂は文字通り人びとが噂するという意、転じて評判のという意味に解してよい。


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