澤陂(詩経国風:陳風)

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詩経国風:陳風篇から「澤陂」を読む。(壺齋散人注)

  彼澤之陂  彼の澤の陂(きし)に
  有蒲與荷  蒲と荷とあり
  有美一人  美なる一人あり
  傷如之何  傷めども之を如何せん
  寤寐無為  寤めても寐ねても為すことなし
  涕泗滂沱  涕泗滂沱たり

  彼澤之陂  彼の澤の陂に
  有蒲與蕑  蒲と蕑とあり
  有美一人  美なる一人あり
  碩大且卷  碩大にして且つ卷なり
  寤寐無為  寤めても寐ねても為すことなし
  中心悁悁  中心悁悁(えんえん)たり

  彼澤之陂  彼の澤の陂に
  有蒲菡萏  蒲と菡萏(かんたん)あり
  有美一人  美なる一人あり
  碩大且儼  碩大にして且つ儼なり
  寤寐無為  寤めても寐ねても為すことなし
  輾轉伏枕  輾轉して枕に伏す

あの沢の岸には蒲と荷が仲よく繁っています、私には思う人があるのですが、憂え悲しむだけでどうすることもできません、覚めていても寝ていても何事も手につかず、涙があふれるばかりなのです

あの沢の岸には蒲と蕑が仲よく繁っています、私には思う人があるのですが、その人は立派な体格に美しい髪を持っています、覚めていても寝ていても何事も手につかず、心は憂えるばかりです

あの沢の岸には蒲と菡萏が仲よく繁っています、私には思う人があるのですが、その人は立派な体格に美しい髪を持っています、覚めていても寝ていても何事も手につかず、体を輾轉とさせて枕に伏してはもだえ苦しむばかりです


美しい男に思い焦がれる女心を歌ったものである、沢辺には草が仲よく茂り、あたかも夫婦のようであるのに、自分は愛する男と結ばれることができずに、悶々と苦しむばかり、そんな切ない女心が伝わってくる

蕑は蘭に同じ、菡萏は芙蓉のつぼみのことをいう


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