アメリカの金融不安:リーマンの破産とメリルリンチの身売り

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サブプライム・ローン問題に端を発したアメリカの金融不安が新たな段階を迎えたようだ。大手証券会社リーマン・ブラザースが、連邦金融当局と大銀行とによる救済計画が破綻した結果、ついに破産申請をする事態に追い込まれた。また古い伝統を誇る証券会社メリルリンチがバンカメリカに身売りすると伝えられ、アメリカン・インターナショナル・グループは巨大規模の資産売却を決定したという。

今年の3月にはベアー・スターンズが破綻して、アメリカの金融危機の根深さを感じさせたが、今回はそれをはるかに上回るインパクトを持つ。なにしろ事態は、一企業の倒産にとどまらず、連鎖的な広がりを見せているからだ。

専門家の見方によれば、これらの金融機関の躓きの石となったのは、巨額の不良債権である。その殆どは住宅市場におけるサブプライム・ローンからなっている。問題が発生してから一年以上もたった今、この問題に解決の糸口が見えていないばかりか、ますます悪化しているというのである。

二十年近くも前に日本が経験したことを、アメリカは今体験しつつある。それなのに、連邦政府はこの問題をまともに受け止めていないのではないかとの不安が、投資家たちの間でくすぶっているようだ。

日本の場合には金融機関に巨額の公的資金を投入して資金ショートを回避させ、併せて大幅な整理統合をすることで足腰を強くさせ、それによって金融危機を乗り切った経緯がある。だがアメリカ政府は、日本がなしたような政策に、いままでのところ、ためらいをもっているようだ。

ベアー・スターンズの場合にも、最後まで事態を静観していたし、その後も個別企業の救済に乗り出すことには否定的だ。最近になってやっと、個人向け住宅金融会社ファニー・メイとフレディ・マックの救済に乗り出したが、これは大企業の救済が眼目ではなく、借り手である個人の救済が目的だとの説明をしている。つまり、ファニーとフレディが倒産すると、そこから金を借りているものがひどい目に陥るから、救済に乗り出したとの理屈だ。

投資家たちは事態がさらに深刻化するのではないかと恐れている。しかし今のところ、株価が急落する等、金融システム全体が崩壊する兆しは見えていない。そこがかつての日本とは多少異なるところだ。


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    このページは、が2008年9月15日 18:35に書いたブログ記事です。

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