詩経国風:檜風篇から「隰有萇楚」を読む。(壺齋散人注)
隰有萇楚 隰に萇楚あり
猗儺其枝 猗儺(いだ)たる其の枝
夭之沃沃 夭(わか)くして之れ沃沃たり
樂子之無知 子の知ること無きを樂(うらや)む
隰有萇楚 隰に萇楚あり
猗儺其華 猗儺たる其の華
夭之沃沃 夭くして之れ沃沃たり
樂子之無家 子の家無きを樂む
隰有萇楚 隰に萇楚あり
猗儺其實 猗儺たる其の實
夭之沃沃 夭くして之れ沃沃たり
樂子之無室 子の室無きを樂む
湿地に萇楚が生えている、その枝はなよなよとして弱弱しい、まだ若いので色はつやつやとしている、つけてもお前は何も知らずに過ごせてうらやましい限りだ
湿地に萇楚が生えている、その花はなよなよとして弱弱しい、まだ咲いたばかりなので色はつやつやとしている、つけてもお前は人間のように家を持たずに過ごせてうらやましい限りだ
湿地に萇楚が生えている、その実はみずみずしい、まだ若いので色はつやつやとしている、つけてもお前は人間のように配偶者を持たずに過ごせてうらやましい限りだ
湿地に生える草は、自若として生き、人間のように配偶者を求めて家を構えることなく、花を咲かせ身を結ぶ、ところが人間たる自分は配偶者もいないので、孤独であらねばならない、こんな自分に引き比べて、草の生き方がうらやましい、そんな気分を歌ったものである
隰は湿地あるいは沼地、萇楚はその沼地に生える草と思われるが、つまびらかにしない、猗儺はなよなよとして弱弱しいさま、沃沃は若々しく艶のあること
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