筆者は、若い頃はコーヒー党で、暑い日でも寒い日でも、ブレーキングタイムでも食事をした後でも、コーヒーばかり飲んでいたものだが、50を過ぎた頃から日本茶のうまさもわかるようになり、最近ではもっぱら日本茶ばかり飲むようになった。それにつれて、お茶の味にもこだわるようになり、多少値段が張ってもうまい茶葉を求めるようにもなった。
コーヒーは、入れ方次第で味が極端に変化する。そこでコーヒーの入れ方については随分と工夫をこらした記憶がある。紅茶やウーロン茶もやはり、入れ方が味を大きく作用する。それらに比べると日本茶は、品質の良いものを使っている限りはあまり期待を裏切ることがないので、筆者はお茶の入れ方にはさして神経を使ったことがなかった。
ところが日本茶も、入れ方次第で味が良くなりもすれば悪くなりもするということを最近知った。
NHKの人気番組「NHKプロフェッショナル」がお茶のおいしい入れ方を紹介し、その中でちょっとした工夫がお茶の味を最大限に引き出すということを教えてくれたのだ。
普段我々が煎茶を飲むときには、急須の中にお茶の葉を入れ、それに電気ポットで沸かした熱湯を注ぎいれ、それを茶碗に移して飲むのが普通のやり方だろう。だがそれでは能がなさ過ぎるというのだ。
番組は茶師と称される前田文男氏を招いて、おいしいお茶の入れ方のポイントを紹介していたが、前田氏によれば、お茶の葉に熱湯を注ぎかけるのはうまくないやり方だということだ。お茶をおいしくするためには、お湯の温度は70度くらいが理想的だというのである。そのためには、ポットから直接お湯を注ぎいれるのではなく、一旦茶碗に入れることによって、湯の温度を下げる必要がある。一度だけではなかなか70度までには下がらないので、二度作業を繰り返し、そのうえで急須に注ぎ入れるといいそうだ。
こうして適度に温度を覚ました湯を注ぎかけると、何故お茶はうまみを増すのか。それはお茶の中に含まれているテアニンという物質が程よく抽出されるからだという。テアニンは甘みの成分なので、これが含まれていると、お茶の甘みが強まり、いわゆるまろやかさにつながるということらしい。
逆に高い温度で入れたお茶は、テアニンが少なく、そのかわりにカテキンが多く抽出される。カテキンは渋みの成分なので、これが多いと、お茶はまろやかさに欠けるというわけだ。
低い温度で入れたお茶にはテアニンが多く抽出されるので、そのお茶は最後の一滴までうまく飲める。むしろその一滴にうまさが凝縮されているということだ。普通我々は最後の一滴など出がらしと称して省みないが、実はそうではないと教えられた。
ここまではNHK番組の受け売りだが、お茶には別の効用がある。それはダイエット効果だ。
お茶の味にとってはマイナスに働くカテキンには体脂肪を燃焼させ、代謝を促す作用がある。これに注目して、いわゆる「トクホ」として売られているお茶もあるほどだ。そのようなお茶は風味には劣るかもしれないが、健康には良いわけだから、一概にカテキンを排除するばかりが能ともいえない。
こんなわけで、筆者は揺れる心をもてあましながら、毎日お茶の味を楽しんでいる次第だ。
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