ライオンの生態:悲しき雄ライオン

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ライオンは少数のオスを中心にして多数のメスとその子供たちが集団を作って生息している。群れの中でのオスの権威は絶対で、メスたちは自分たちの力でしとめた餌をまずオスにささげる。だからライオンの社会は、人間社会のハーレムによく喩えられてきた。

ところがよく観察すると、オスの権威は力によって強制的に確立されたものではなく、メスたちの受容によって成り立っていることがわかってきた。オスは集団の長となるために、その生涯をかけて過酷な試練を潜り抜けなければならない。この試練の中で殆どの雄ライオンが脱落し、最後まで生き残れるのは、ごく少数だけというのが実態らしい。

そうしたライオン社会の生態を九年にわたって追跡調査した結果を、先日NHKの報道番組「悲しき雄ライオン」が伝えていた。

ライオンの社会は基本的には母系社会だという。それは血のつながったメスたちとその子供たちで形成され、オスは外部から迎えられる形で加わる。その際にメスたちがオスを値踏みし、力強くて自分たちを外敵から守ってくれそうな個体を迎え入れるわけである。

通常オスは生まれて二年間ほどは母親の庇護の下で成長するが、その後は集団から排除されて放浪の旅をしなければならない。集団を出るときは一人ぼっちではなく、同じ時期に生まれた兄弟や従兄弟たちと行動を共にすることが多い。こうして放浪生活に入ったオスは、成長するとどれかの集団に迎え入れられ、そこで王としての生活を始めるのであるが、その際に集団のメスたちによる値踏みに会うわけである。オスはこの値踏みに合格しないと、どの集団にも加わることができず、生涯放浪の旅を続けなければならない。

メスがオスを値踏みする材料はまずその外見である。タテガミの色が濃くてボリュームがあることが条件のようだ。場合によっては、ほかの集団のボスと闘わせて、その強さを確認することもある。

メスたちの立場にしてみれば、強い雄ライオンを戴いて外敵から守ってもらうことで、安心して子育てをすることができる。というのも、オスのライオンは、自分の子ども以外のオスの子ライオンをライバルとみなして殺してしまう習性をもっているからだ。

そこである集団からオスがいなくなると、その集団は存続の危機を迎える。当然放浪の雄ライオンが集団に入り込もうとして近づいてくるが、それは子を持たない若いメスにとってはプラスのことであっても、子育て中のメスにとっては脅威となる。そこで母親たちは子供をオスの攻撃から守るために集団を出なければならない。つまりこの時点で集団は分裂するわけである。

ライオンの社会はこのように、統合と分裂を交互に繰り返しながら、集団を維持していく過程から成り立っている。強いオスが長生きして、次々と子孫を増やしていけばその集団は黄金時代を謳歌できるし、反対にオスが弱くて外敵を排除できる実力を持たないと、集団は安定しない。いずれにせよ、集団はメスとその子供たちによって形成されているのである。

ライオンはメスたちが共同して狩をすることで生活の糧をえている。オスは狩が苦手で自分で餌を確保する能力が弱い。だから放浪の雄ライオンが生き残る確立は低いのだ。メスたちも同胞の数が多ければ多いほど楽な狩ができる。少数では狩をするのも楽ではないのだ。

こんなわけでライオン社会には、狩が可能になるための適正な規模というものがある。その規模を維持できないと、ライオンたちは生きて行けない。

彼らはオスもメスも、厳しい条件の中で生きているのだ。


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