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魔女の火あぶり


魔女の火あぶりなどというと、中世ヨーロッパの森の奥から遠くこだましてくる言葉のように聞こえるが、21世紀の地球上にも、いまだに同じことが行われている所があると聞き、驚いた。

南太平洋のパプアニューギニアで最近起きた魔女の火あぶりが、世界を驚かせたのだ。その様子を、CNNが伝えていた。Woman Suspected of witchcraft burned alive. By Saeed Ahmed

今週の火曜日というから1月6日のことだ。パプア・ニューギニアの高地のある農村で一人の女性が火あぶりにされた。女性はまだ20歳前後の若さだったそうだ。裸にされたうえで手足を縛られ、口には猿轡をかまされた上で丸太の柱に結いつけられ、周りに敷き並べられたタイヤに火をつけられたらしい。立ち上った煙を不審に思った付近の住人が現場に駆けつけてみると、燃え盛る火の中で人間の焼け崩れるところが見えたといっている。

情報を察知した現地の警察はすぐさま捜査を始めたが、詳しい情報を提供してくれるものは、いまのところ現れていない。というのも魔女を火あぶりにすることは、この土地では決して異常なことではなく、まして犯罪だという意識がないからだ。

実際、何か異常なことが起きると、この土地の人々は、誰かが魔法をかけたからに違いないと思い込む傾向が、いまだに強いという。そこで犯人探しが始まり、その結果犯人と目されたものは、魔法使いあるいは魔女と認定され、火あぶりにされるのである。こうして火あぶりにされたものの数は、高地の二つの州だけでも、昨年一年間に50人を記録したそうだ。

中にはこんな例もある。妊娠していた女性が魔女の嫌疑をかけられ、懲らしめに木の枝に吊るされた。女性は何とか逃れようと身をもがいたが、全身が緊張するあまりに、ついに分娩してしまった。生まれてきた子は女の子だったという。このケースでは、親子は幸いに救出され、二人とも無事生き延びたそうだ。

それにしても、なぜこんな悲惨なことが絶えないのか。記事は、魔女の火あぶりの背景には、エイズの蔓延があると見ている。

国連によれば、パプア・ニューギニアはアジア地域で最もHIV感染率が高い。人口わずか670万人のこの国で、太平洋地域のエイズ患者の90パーセントを占める。エイズの脅威にさらされた住民たちは、その原因をウィルスではなく、魔法に帰しているというのだ。

司法当局では、人間を火あぶりにすることは犯罪であり、またエイズの原因は魔法などではないのだと、住民を必死に説得しているが、今のところ効果は薄いようだ。火あぶりに加担した人たちは、被害者の家族も含めて誰からも非難されないし、まして名前を密告される恐れもない。


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