吸血鬼 Vampire の遺骨? ヴェニスで発掘された奇妙な骸骨

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イタリア・ヴェニスのラグーンにあるラザレット島で奇妙な骸骨が発見されたのは2006年のことだ。それは16世紀に埋葬された女性の骸骨で、両顎の間に大きなレンガを銜えていた。それが何を意味しているのか、2年間にわたって研究してきたフィレンツェ大学のマッテオ・ボリーニ Matteo Borrini 教授が、このたびその意味を明らかにした。この骸骨は吸血鬼 Vampire だったというのだ。

普通吸血鬼といえば、我々はドラキュラを連想するが、この小説が書かれたのは19世紀後半で、多分に近代人の空想が混じっている。ところがヨーロッパ中世の民衆にとっては、吸血鬼はドラキュラのようなイメージではなく、疫病つまりペストを撒き散らして人々を死に追いやる悪魔として考えられていた。

中性のヨーロッパはたびたびペストの蔓延に見舞われた。そのたびに何百万という人が死んだ。人々はペストが流行るのは、それを撒き散らす悪魔の仕業に違いないと考え、一風変わった人間に魔法使いや魔女のレッテルを貼って、火あぶりにしたものだ。

なにしろこの疫病はあっという間に大勢の人を死滅させる。そんなことが起きるのは、神の仕業でないとしたら、悪魔の仕業に違いない。だから悪魔かその手下と思われる者はことごとく抹殺しなければならない。こうした妄想が中世のヨーロッパ人を捕らえていたのだ。

こうしておびただしい人が悪魔のレッテルを貼られて殺されたが、中には殺したと思ったにかかわらず、実は完全には死んでいないで、墓の中から疫病を撒き散らし続けているものがいる、そうとも考えられていた。

そうした連中は、頭上にかぶせられた帷子を食い破り、口の周りから血をたらし、人の血を吸ったせいで丸々と太っている。人々はそれらを悪魔の中でも最もたちの悪い悪魔、吸血鬼だと考えて恐れたのである。

この女性の場合には、いったん埋葬された後で、再び墓を掘り返された際に、帷子に穴が開き、口元に血がこびりついているところを見られたのだろう。だから吸血鬼のレッテルを貼られて骸骨にレンガを詰め込まれたのだろうと、教授は推測している。

ラザレット島はヴェニスによって隔離地帯として利用されていた。ヴェニスの当局はペストがはやるたびに、ペスト患者をこの島に隔離し、死者を集合的に埋葬した。ペストは周期的に猛威を振るったから、墓はたびたび暴かれて、何度も再利用された。

この女性が埋葬されたのは1576年におけるペスト流行の際だという。この年のペスト流行は多大な死者を出し、ティティアーノも犠牲になっている。埋葬が間に合わず、墓はたびたび暴かれて新たな死者を積み重ねたものと思われている。

女性が埋葬されてそう時がたたないうちに、新しい死体を埋葬するためにその墓が暴かれた。すると、この女性を包む帷子の口にあたるところに穴が開き、口からは血が噴出し、体は丸々と膨張していた。それをみた人々は、この女性が吸血鬼に違いないと判断したのだ、そう教授はいう。

科学的に分析すれば、これらの現象はすべて死体の解体過程に伴うものである。体が膨張するのは体内から出るガスのせいだし、帷子に穴が開いたのは、口の中で繁殖したバクテリアによるものである。だが当時の人にはそんな知識はない。この女性は実はまだ死なないでいて、墓の中から人々の血を吸い続けているに違いない、そう思ったわけである。

だから人々は魔よけのために、この女性の口にレンガを詰め込んだのだろう。吸血鬼を殺す方法としては、心臓に杭を打つことも行われたが、この女性の場合には、それだけでは足りないと判断されて、レンガで口をふさがれたのだろう、こう教授は推論する。

大昔に生きていたひとりの人間の遺骨が、我々をさまざまな想像に駆り立ててくれる。


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