知的障害者の雇用

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障害者雇用促進法が制定されて、各企業に一定の割合で障害者の雇用が義務付けられたことによって、障害者の職場進出が拡大してきた。障害者が仕事を持って自立するということは、ノーマライゼーションにとって究極の姿であるから、こうした趨勢が今後も進んでいくことが望まれる。

ところで筆者が籍を置いている事業所も、これまで法定の雇用割合を達成できていなかったことを反省し、このたび本格的に障害者の採用に踏み切ることとした。

地元のハローワークの指導を受け、数名の枠で障害者の採用を募集したところ、28人の方が応募してきた。そこで筆者らはハローワークに赴き、3組に別れて応募者の面接を行った。

28人の内訳をみると。三分の二が知的障害者の方たちである。筆者もそのうち5人の方を面接したが、中にはしっかりとした受け答えをする人もいて、彼らを含めて何人かは採用することになるだろうと思う。

これまで障害者の雇用といえば、ほとんどが身体障害者に限られていた。身体障害者は身体の機能こそ低いといわねばならないが、知的な能力が高い人もいる。だから企業はいろいろと工夫をしながら彼らを活用してきたし、期待にこたえる人も多かったのである。

ところが知的障害者の場合には、知能の発達が遅れていることもあって、対人関係や実務能力の面で心配な面が多く、企業はなかなか彼らの雇用には踏み切らなかった。

今回筆者らが面接した知的障害者の方たちは全員が四度に認定された方である。知的障害の認定は昔から、もっとも重い一度から最も軽度の四度まで、四段階に区分されてきた。だから今日は、もっとも軽度の人たちが応募してきたのだというのがわかる。おそらくハローワーク側の配慮によるのだろう。

それでも、ほとんどの人は単身ではなく、ケースワーカーや支援団体の関係者に付き添われていた。知的障害者にとって、雇用は本当に狭き門であるから、本人たちも支援者たちも必死になっている、そんな雰囲気が伝わってきた。

面接した印象としては、健常者と同じようなレベルでの期待には無論達していないが、でも雇う側がそれなりの工夫をすれば、十分働けるのではないか、そんな風に感じさせるものだった。

ところで筆者には30年ほど前に、障害者の団体と仕事上の付き合いをしたことがある。その当時はまだノーマライゼーションの思想も確立されておらず、障害者対策は、一昔前の取締りの域を脱して、やっと社会福祉の重要なテーマだと認識されてきたばかりだった。だから行政も恩恵的な態度で臨むことが多かったし、まして企業はその存在すら問題にしていなかった。

中でも知的障害者に対しては、肢体不自由者以上に厳しい状況が続いていた。糸賀一雄らの努力によって、精神薄弱者施策の重要性が次第に認められてきていたとはいえ、その内容は精神薄弱児養護学校の整備や、入所および通所施設の整備が主で、雇用にいたっては、全く問題にされていなかった。

そうした中で、精神薄弱児の養護団体「手をつなぐ親の会」の人々が、子どもたちになんとかして雇用の機会を与え、少しでも自立して欲しいと願っていた、そんな姿が印象に残っている。

知的障害四度といえば、多少対人関係が苦手だったり、抽象的なシンボル操作ができないといったハンデは無論ある。だが知能のレベルは発達過程の一定の線まで達しているものが多い。

そうした人たちは、どうにか社会生活をこなしていけるはずだ。要は本人の自覚次第だ。本人の自覚に合わせて、雇う側がそれなりの配慮をしてやれば、周囲の仲間ともうまく付き合い、また与えられた仕事もこなせるのではないか。

彼らの懸命になっている表情を見ながら、こんな風に感じたところだ。


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