李白の雑言古詩「野田黄雀行」(壺齋散人注)
遊莫逐炎洲翠 遊びては炎洲の翠を逐ふ莫かれ
棲莫近呉宮燕 棲みては呉宮の燕に近づく莫かれ
呉宮火起焚巣窠 呉宮火起って巣窠を焚かん
炎洲逐翠遭網羅 炎洲の翠を逐へば網羅に遭はん
蕭條兩翅蓬蒿下 蕭條たる兩翅 蓬蒿の下にあれば
縱有鷹鸇奈汝何 縱ひ鷹鸇有るとも 汝を奈何せん
遊んでは炎洲(海南島)のカワセミを追ってはならない、くつろいでは呉宮の燕に近づいてはならない、呉宮からは火が起こってツバメの巣を焼くかも知れぬ、カワセミの後を追っては一緒に網にかかるかも知れぬ、ただひとり翼を蓬蒿の下に休めておれば、たとえ鷹や鳶がきても捕まることはない
李白は寓意詩を作ることはあまりなかったが、これはその数少ない一つ、スズメに寄せて、身分の高い人と付き合うことの危険を警告したものだ
呉宮の燕は「越絶書」に見える故事。夜警が松明をもってツバメの巣を覗き込んだところ、誤って火が建物を焼き、町全体が炎に包まれたという話である。
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