より偉大な愛 Greater Love:ウィルフレッド・オーウェン

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ウィルフレッド・オーウェンの詩「より偉大な愛」Greater Love(壺齋散人訳)

  赤い唇も
  イギリス兵の血に染まった石ほど赤くはない
  恋人たちのやさしさも
  彼らの純粋さの前では色あせる
  おお愛よ 君の目は
  わたしの代わりに光を失ってしまった

  君の細い体つきが
  串刺しにされた肉のようにふるえながら
  神に見放された土地を
  ころころと転がっていく
  世間が抱いている烈しい愛が
  彼らを痙攣させて死の老耄に追いやる

  君の声はもう歌うことがないのかい?
  屋根裏を吹き抜ける風のような歌を?
  君の声は張りを失い
  やさしさを 夕べのようなさわやかさを失った
  誰にも聞かれない死者の声のように
  大地が君らの哀れな口をふさいでしまったのかい

  君の心臓はもう温かくはない
  大きくもなく また弾丸でくりぬかれた穴のように空虚だ
  君の手は血の気を失って青ざめているけれど
  炎と霰のなかを君の十字架をひきずっていく
  ものたちの手のほうが青ざめている
  いくら君が泣いても もうかれらに呼びかけることはできぬ


戦場で死んでいった戦士たちにささげたオーウェンの挽歌といえる作品だ。この詩の中で、オーウェンは死んだ兵士たちを、美の化身として描いている。その美に比べれば、恋人たちのやさしさや美しさも色あせるといっている。何がオーウェンにこのような言葉を吐かせたのか。


Greater Love  Wilfred Owen

Red lips are not so red
As the stained stones kissed by the English dead.
Kindness of wooed and wooer
Seems shame to their love pure.
O Love, your eyes lose lure
When I behold eyes blinded in my stead!

Your slender attitude
Trembles not exquisite like limbs knife-skewed,
Rolling and rolling there
Where God seems not to care;
Till the fierce Love they bear
Cramps them in death's extreme decrepitude.

Your voice sings not so soft,?
Though even as wind murmuring through raftered loft,?
Your dear voice is not dear,
Gentle, and evening clear,
As theirs whom none now hear
Now earth has stopped their piteous mouths that coughed.

Heart, you were never hot,
Nor large, nor full like hearts made great with shot;
And though your hand be pale,
Paler are all which trail
Your cross through flame and hail:
Weep, you may weep, for you may touch them not.


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