厚生労働省が先日発表したところによると、2008年の出生率は前年よりわずかに上昇したそうだ。日本の女性の生涯出生数は2005年に1.26人という最低の数字を記録して以来、三年連続して微増し、2008年には1.37に回復した、しかし一方で、死亡者の数が生まれてくる子供の数を上回り、人口は依然減少傾向にある。
統計分析によると、子供を生んだ人は30歳代に多い。20歳代に子供を生むのをためらっていた人が、30歳を越えて子供を生む気になったということらしいが、その背景には、2005年頃から昨年まで続いた日本経済の状況が垣間見える。日本は長い低迷状態を経て、この時期に小康状態とも言えるささやかな好景気に恵まれた。それが国民の将来観を多少とも明るくしたのだろう。
だが日本は今年に入って、再び深刻な経済不況に突入し、国民とりわけ若い人たちの暮らしは、厳しいものになっている。そうした状況が今後の女性の生涯出生数に再び悪い影響を及ぼすのではないか、そう指摘する向きもある。
こんな分析を読むと、国民一人一人の行動スタイルが、いかに国全体のあり方に作用されるかということがわかる。女性たちが安心して子供を産むためには、それを社会全体で支えるというスタンスが必要だ。そうでないと、日本の人口は減少していくばかりだろう。
国立人口問題研究所は、日本の将来人口をいくつかのパターンにわけて予測している。最もシビアに見積もった低位予測では、現在12800万人前後ある日本の人口は、2050年に9200万人にまで減少する。これは女性の生涯出生数を平均1.2人に設定した場合の数字だ。これをさらに将来に延長してシミュレーションすると、今世紀の終わりである2100年には3500万人にまで減少することになる。明治維新の頃の水準だ。
一国にとって、適正な人口規模とはどんなものか、それは難しい問題だが、少なくとも人口が長期的に減少していくことは、国の活性をそぐことにつながる。
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